双子の指導役

連れていかれた場所には、机とベッド、あと容量が大きそうな棚があり、その他は何もなかった。



どうやら、ここに祐と住むらしい。



突然だが、メイドとは、どういう人達の事を指すのだろうか?


メイド服を着ている人?


それとも、主人を持った、女のメイド服を着ている人?




全て、違う。


いや、主人を持った、というところは同じだが。


なんと、異世界のメイドは――




執事と同じ格好らしい。



一応、僕らも執事と言う事になるそうだ。


だから、僕らは執事の洋服を着せられた。(勿論執事に。)



そのあと、城の説明を受けた。




もし城の構図が全て覚えられなくても、それは仕方がないことらしい。


いくら10年使えているベテランだとしても、まだ全ての構図は覚えきれておらず、移動するときは地形魔法という、地図を表示できる魔法を使用しているそうだ。



……でも。



いや、本当に申し訳ないんだけれども。(?)


全て、覚えてしまった――。



元々、記憶力には、双子揃って自信がある方で、一度見たもの、聞いたことは一生忘れないのだ。


まあ、一度見たものは忘れないっていう、ちょっぴりレアな目をもっているっていうのもあるんだけど。



執事には、随分驚かれ、覚える秘訣を聞かれたけれども。


秘訣も何も、レアな目を持っているだけなので、とにかくごまかした。


多分、説明してもそんなことあり得ない、本当は秘訣があるんだろうって言われるだけだろうから。




そのあとは、書庫に連れていかれた。


今日は色々あって疲れているだろうから、武術の指導ではなく、勉強をさせられるらしい。




まあ、戦争には指揮のための知恵も必要だし、勉強は損にはならないだろう。


今日はとりあえず、書庫にあるとてつもない量の本を、片っ端から読んで行くことになった。


















――――そういって、張り切って本を読み進めていったのは認める。


でもまさか、一日で、図書館5、6個分ほどの本を、全て読み終わるだなんて、誰が予想できただろうか。



「もう、勉強はやらなくていい……。」



僕達が本を読み終えたことを報告すると、魔王は、頭を抱えてそう言った。




















~次の日~



癖で三時に起きてしまった。



三時に起きて、色々家事を済ませておかないと、殴れて、蹴られて、食事を抜かれる――。

そんな環境にこの体が居たせいか、早起きが身についてしまったようだ。





いや、良いことなんだけど……。


でも、三時って日も登ってないし、執事もメイドも誰もいないから、やることが何もないんだよね……。



だから、部屋の掃除をし、ベランダに洗濯物を干すところがあったので、洗濯物を干し、やることがなくなったので、城の探検をすることにした。



まだ、全ての場所を教えてもらったわけでもないし、ファンタジーの城だったら、隠し通路とかもあるだろうしね。




そうして探検をしていると、おじいちゃん執事――ヴィルさんとばったり出会う。



ヴィルさんが指導役を命じられているそうだから、武術を指導してもらうことになった。



何も教えられないまま、木剣を持たされたので、二人でヴィルさんに向かっていく。


――我ながら、音速を超えるほどの速さで走っていたと思う。


どうやって風圧、空気抵抗に抗ったのかはわからないが……。




でもヴィルさんは、僕達の攻撃を全て防いだ。




少し、安堵した。


だって、もし指導役のヴィルさんが僕達より弱かったらどうしようもないし。




多分、祐も同じことを思ったと思う。




ヴィルさんと僕達はまだ、互角に戦えていた。




いや、でも二人で互角だから、一人じゃヴィルさんの半分の力にも及ばないのかもしれない。



最終的に、ヴィルさんの攻撃にギリギリ耐えた――と思ったが、そこで少し油断したのだろう。力が弱まったのか、木剣を弾き飛ばされてしまった。



試合は終わった。



ヴィルさんは、僕達に失望する目を向けることも無く、逆に微笑んでいた。



「いやー良かった良かった。妖と祐が私の攻撃に最後までついて来れて。」



そうヴィルさんは言った。



なんでもヴィルさんは元騎士団長というお偉いさんで、騎士の中で今でも一番強いと言われているらしい。



でも、年で騎士団長はやめることにしたそうだ。




ヴィルさんの一太刀で、普通の騎士は吹き飛んで、それで試合終了になってしまうらしい。




最後まで互角と言ってもいいほどの戦いをしてくれた者は、今まで一人もいなかったそうだ。



「まだ私に勝てなくても、始めたてでこんなに強いなら、将来が楽しみだ。魔王様に少年の見た目に変えてもらっても、中身は三歳児なのだからな。」



そうヴィルさんは言った。


でも、目を細めると、


「うん?あれ、二人とも知能の目と神の目を持っているのか。」


と言い出した。



驚いた。そんなことが分かるなんて。



僕達の微かな表情の違いに、驚いたことが読み取れたらしい



「ああ、これは【鑑定】っていうスキルで、一定以上のレベルになると、もらえるスキルだ。

レベルが上がっていくほど鑑定の精度もあがるので、私はこの国一の鑑定能力だろうな。

ステータスって念じると、自分のステータスが見れる。

レベルがあるのだが、人間、魔物、魔人、または薬草などの採取で経験値が稼げ、

その経験値が一定以上になるとレベルがあがるのだ。

段々とレベルは上がりにくくなってくるがな。今はレベル1のようだが、

あげていくと色々と身体能力が向上したりするので、

戦争に行ってレベル稼ぎにいってもいいかもしれないぞ。

ちなみに、知能の目は一度見たら忘れない能力、神の目は今はまだ使えないみたいだから情報がよく読み取れないな。」



と説明してくれた。





説明は分かりやすかったが……。

まさか、戦地を小遣い稼ぎが出来る場所とでも言うように言うとは……。恐るべし。




元々この人が戦地に出向けば一瞬で戦争なんか終わるのではと思ったが、引退した身の上、魔王を守るという使命があるらしいので、魔王の城から離れられないらしい。



街に買い物に行くときは、部下に買ってこさせたりと……。なんとまあ、贅沢な事だ。









まあともかく、この日から、僕達はヴィルさんの弟子になったのだ。

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死ぬはずだった双子の異世界転生!? こリス @ko-risu

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