僕達のご主人様

…………ガラガラガラガラ





馬車の音がする。

目を開けると、そこは見知らぬ街だった――。











まあ、その街は、小説で良く見る転生系の物語の定番のような街だった。















僕は馬車の中にいるようだ。


隣には、灰色と青色の目をした少年がいる。



その少年は、僕――妖を見て、わずかにだが口を動かした。


口の動き的には、


い、せ、か、い、て、ん、せ、い、し、あ、に、た、き、だ、ね


だが、多分異世界転生したみたいだね、だと思う。



僕は首を縦に振る。





そして少年――祐は、無表情で街を見た。



いや、実際はワクワクしているんだろうけど、元々僕達が転生する前、酷い環境にあったらしいから、そのせいだろう。


僕もさっきから表情筋がピクリとも動かないし。



そして祐と見つめ合い、相手の目から自分の顔を確認する。


年は大体四歳だろうか。もしかしたら三歳かも。

あと目は灰色と赤色……ではなくて、どうも赤色の瞳の方は見る角度によって目の色が変わって見えるようだ。


体はとても痩せている。

こんなに痩せている人間、初めて見た。


でも、多分将来美少女になる事が分かるほど、顔が整っているし、肌も真っ白だった。



祐も全く同じだ。










そうして確認した後、周りの景色を見ていると、馬車が止まり、ドアが開いた。



そして、馬車を操縦していた者が、僕達を担ぐ。




そして馬車から三分ほど歩くと、城の門があった。

僕達を担ぐ者は、慣れたように身分証のようなものを取り出し、兵に見せて中に入り、城の扉を開ける。









そして、城の中に入って五分ほど歩くと。


とても大きな扉が。


僕達を担ぐ者は、僕達を担ぎながらも器用にノックをして、中に入る。





そして僕達を下すと、あっという間にどこかに消え去って行った。




前を見ると、美少年がニコリと笑って僕らを見ていた。






そして、



「こんにちは。私は魔王。君達を引き取った者だから、父になるのかな?まあ、よろしくね。」



と言ってきた。


僕達は、じっくりと美少年を観察する。


美少年は、その視線に気づくと、



「あ、変な人じゃないよ!?とりあえず、その姿は話しにくいよね。」



と言い、指を鳴らす。


すると、僕達の目線が高くなった。




つまり、僕達の身長が伸びたようだ。

大体11歳くらいの身長だろうか。



「よし、これで喋れるでしょ?言語は理解できてるみたいだし、多分三歳の体じゃ上手くしゃべれないしね。」



美少年はそう言って、何か質問をするよう僕達に言った。




祐は遠慮しているようなので、僕から質問をすることにした。



「僕達を拾った理由は?魔王のくせに、人手不足なんてことはないでしょ?」



僕の質問に、魔王は残念そうに、



「残念ながら、その通りなんだよね。人手が足りなかったから、才能がありそうな子供達を探しに行ったら、君達が見つかったってわけ。…………理由?あー、理由ね……。」



こういった。



そして、それから語られたのは、物語での救世主、勇者の認識をひっくり返す話だった。



勇者……それは、人間を支配する者の事で、よく救世主と勘違いされるけど、そういうわけでもないんだ。


前の勇者とは、仲良くさせてもらっていたし、同盟まで結んでいた。


しかし、その勇者が死んだあと、新しい勇者になって――。




今の勇者は、魔界に攻め込み、我らが努力して集めた果実まで奪わんとしてくる。

魔界は、果実などが育ちにくいんだ。だから、その分、管理もしっかりやっている。


皆の血と涙の結晶を、勇者に奪われてなるものかってね。



挙句の果てに、同盟を無くそうとすると抵抗してくる始末。


で、その勇者と戦争になったんだ。



でも、勇者っていうのは魔王を殺せる唯一の人間なんだ。



だから、私は参戦出来ないんだよ。



そうこうしているうちに、多くの魔物たちが無慈悲にも殺されていったわけだ――――。









魔王が語ったのは、そんな最悪の勇者の話だった。




で、なんでも僕達は魔族の中でも特に優れた上位種で、寿命死だけは絶対にない、最強の種族らしい。



まぁ、何故そんな種族なのに、過酷な環境にあったかは謎らしいが……。



まあ、その最強の種族の中でも、最強と言っていいほどの力を僕達は持っていたから、こうして連れてこられたらしい。


……うーん。なんか、異世界転生した主人公が最強でしたっていうありきたりな感じだね。まあ、強くて嬉しいっちゃ嬉しいけど……。

努力して強くなるのも僕の性格上良かったんだけどな……。


僕は溜息をついて、



「とりあえず一年は頂戴。その間に、色々と力とか、知恵とかをつけなきゃいけないから。勿論ちょくちょくなら参戦するから。」



と言った。


魔王は、


「そんなに短くていいの!?

それくらいなら全然いいさ。じゃあ君らに師匠もつけないとね。あー、まあ彼でいっか。」



と呟いた。


そして魔王が指を鳴らすと、部屋の中におじいちゃん執事が現れる。


そして僕達は、そのおじいちゃん執事に担がれて、新しい自分の部屋に運ばれることになったのだった――。

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