美人でギャルな幼馴染の裏アカの呟きが俺について書かれているのは気のせいですか？

第7話 眠れない

「……どうしたもんかな」

「海斗くん、眠れないの？」

　俺と唯はピザを食べ終えた後、それぞれお風呂に入ったり歯を磨いたりして寝る準備を整え、ベッドに入ったのは良いのだが、緊張のあまり心臓の鼓動が早くなってしまい全く寝付けない。

「唯は眠れそう？」

「自分から提案しておいてなんだけど、緊張しすぎて全然寝付ける気がしないよ」

「やっぱり、俺がソファで寝た方がいいんじゃ……」

「それはダメって言ったでしょ。それにすぐには寝付けなくても私はこうして近くで海斗くんと話せるだけで幸せな気分だよ」

「そ、そっか」

「海斗くんは違う？」

「そんなことないよ、俺も唯と話すのは楽しいからね」

　たしかに緊張のせいで寝付くのには時間が掛かってしまうかもしれないが、横になりながら唯と話しているだけで俺は幸せだ。

　唯も同じ風に感じてくれていてくれて嬉しかった。

「こうして話していると、昔を思い出すよね」

「そうだね、昔は唯がよく俺の家に泊まりに来たり、俺が唯の家に泊まりに行ったりしてたよね」

「懐かしいね。改めてだけど、海斗くんこれからもよろしくね」

「うん、こちらこそよろしく」

　やっぱり、唯と話しているときが一番楽しい。

　もちろん、緊張はするけど。

「緊張で心臓がドクンドクンいってるけど、やっぱり海斗くんといると安心感があるよ」

　そう言うと、唯は俺の片腕にくっ付いてくる。

　まずい、俺の理性がぶっ飛んでしまいそうだ。唯、胸を押し当ててくるのはやめてくれ。

　もちろん、唯自身は意識して胸を押し当ててきているわけではないのは分かるのだが、そのせいで余計に言いづらい。

　俺から言ってしまうと、俺だけが過剰に意識しているような気がするからだ。

「海斗くん、どうかしましたか？」

　変なプライドなんて捨ててしまおう。

　このまま何も言わなければ俺は理性に負けてしまう気がする。それだけは何としても阻止しなければ！

「唯、あの……」

「……？」

「当たってる」

「……っ！？　ごめんなさい！」

　唯は俺が勇気を出して伝えたことにより、ようやく自分が無意識のうちに胸を押し当てていることに気が付いたようで慌てて俺の腕を離した。

　暗くてよく分からないけど、唯が顔を真っ赤にしながらあたふたしていることだけは分かる。

　唯は何度も謝ってくるのでこちらも申し訳なく感じてしまう。

「そこまで謝らないでもいいんじゃない？　別に悪いことをしたわけじゃないんだからさ」

「いや、でも無意識とはいえ、海斗くんの腕に胸を当ててしまったので。不快だったよね」

「不快なわけないよ。だから、もう謝る必要ないからね」

「それなら良かった。海斗くんに不快に思われでもしたら私、どうにかなっちゃう気がする」

　胸を押し当てられて不快に思う男なんてこの世に存在するのだろうか。

　そんなことを考えながら俺はそっと瞼を閉じた。

　*****

「ふぁ、おはよう海斗くん」

「おはよう、ちゃんと眠れた？」

「うーん、残念ながら緊張しちゃってあまり眠れなかったよ」

「そうだよね、俺もあまり眠れなかったよ。今日は授業中に眠ってしまわないように頑張らないとな」

「ふふっ、そうだね」

　俺と唯は歯を磨いたり、軽く朝食を食べ、学校へ行く準備を整えてから学校へと向かった。

「二人で学校に行くのも昔を思い出すよね」

「そうだね、懐かしいね。また海斗くんの家に泊まるときは下校だけじゃなくて登校も一緒にしたいな」

「俺は良いんだけど、また寝不足で登校することになるかもしれないけど大丈夫？」

「それは回数を重ねればきっと慣れるよ……きっと、多分」

　唯はまた俺の家に泊まりに来てくれるらしい。よかった。

　今回が最後にならなくてホッとした。

　俺と唯が学校に着いたときには朝のショートホームルームが始まる直前でクラスメイトのほとんどがすでに席についており、クラスメイトたちの視線が俺たちに集まっていた。

　ショートホームルームが終わると、クラスメイトたちが俺と唯の席の周りに集まってきた。

　なんかこの光景見たことあるな。

「ねえ、二人とも一緒に登校してきたよね。これからは登校も一緒にすることにしたの？」

　そう聞いてきたのは唯の友達のギャルの子だった。

　目をキラキラと輝かせながら、何故か興味津々な様子で聞いてきた。

　俺が答えようとすると、先に唯が代わりに答えてくれた。

「昨日、海斗くんの家に泊まったの。だから、今日は一緒に登校してきたの」

「そうだったんだ！　昨日言ってた用事があるから遊べないっていうのはお泊りのことだったのね！」

「あ……」

　え……？

　唯は友達と遊びの誘いを断って俺の家に泊まりに来てたのか。

　唯は失言した、と思っているような表情でその友達を見ていた。

　だが、その友達は全く怒っている様子はなく、まだ目をキラキラと輝かせていた。

「じゃあ、お詫びにお泊りでどんなことがあったか教えてよね～」

「え～、絶対？」

「昨日、私たちの誘いを断って行ったんだよ？　このくらい私の権利じゃないかなぁ」

「うっ」

　唯は完全に弱みを握られてしまい、そのギャルの友達にどこかへと連れて行かれてしまった。