最終話 私の告白
「あの…颯馬くん?」
「う、うん…」
「いつも何も話さないで本ばっかり読んでたけど、それはどうしてなの?」
「そ、それは…恥ずかしくて…」
くっ…可愛いかよ…!
「じゃあ…一緒にお出かけした時は?」
「嬉しかったよ…」
相変わらず私の目は見てくれないけど、でも耳はもう真っ赤になってて、そんなふうにされたら、意地悪したくなってきちゃう
「じゃあじゃあ、手繋いだ時は?」
「うっ…」
「ねえ、どうだったの?」
「…覚えてない……」
「嘘…だよね?」
「はい…」
はぁ…可愛い…この照れてもじもじしてる感じが堪らないよぉ…
「ねえ…教えて?」
私は彼の手を取り、顔を覗き込む
「ごめん…覚えてない…というより、ドキドキして何も考えてなかったんだ…」
「じゃあ、今は?」
「ドキドキしてる…」
「ねえ、颯馬くん…」
「うん…」
「私も…ドキドキしてるし、凄く嬉しいの」
「え…?」
「どうしてだか…分かる?」
「それは…」
だって…だって…
「私もね、あなたのことが…颯馬くんのことが好きなの…」
颯馬くんはバッ、っと私の顔を見て、けどすくに目線を外して、「いや…それは…」とか、何かごにょごにょと言っている
「あ…あのね?好きでもない男の子と二人きりでお出かけなんて…私、しないから…」
「そ、そそ…そっか…」
「う、うん…だから…」
伏せ目がちだけど、それでも私の目を見てくれる彼に…
「だから…つ、付き合ってくだしゃい…」
う…か、噛んだ…!
ここで噛むとかありえないでしょ!
「うぅ…」
「伊織さん…一つだけ聞きたいんだけど…いいかな…」
「え…い、いいわよ…」
え?なに?この期に及んで何を…?
「付き合うって…どうすればいいの?」
「え?」
「あの…何すればいいの?」
わぁ…そこ?そこに疑問持つ?
「そうだね…一緒に下校したり…」
「それ…今してない?」
「じゃ、じゃあほら!二人で手繋いでデートしたり?」
「…それっぽいのもしたよね」
「くっ…」
私はそんな経験豊富な女じゃないのよ!
だからそれくらいしか思いつかないの!!
「え?…伊織さん?」
「む~…」
何よ…いいじゃない…。私はそれだけで十分楽しいし、嬉しいんだから
少し拗ねてると、
「ごめん…そういうつもりじゃなくて…」
颯馬くんは、いつの間にか離れていた私の手を取ってくれて、
「あ…」
「こうしてると、なんか嬉しい」
「颯馬くん…」
「本当…よく分かってないけど、俺でよければ…よろしくお願いします…」
そう言って、キュッと手を握ってくれる彼に、私は…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねえ、化学教えてよ」
「本当に同じ大学にするの?」
「当たり前でしょ?」
「当たり前なんだ」
3年生に上がっても、私と彼はあの日から変わらず、ずっと仲良く過ごしてきたと思うけど、変わったこともあった
「だからいいでしょ?颯馬の方が頭いいんだから」
「英語は伊織の方ができるでしょ」
2年生の夏休みくらいから、気が付けばお互いに呼び捨てで呼び合うようになっていて、今では誰かの目を気にすることなく、接している
「一科目くらいいいじゃない!」
「いや…怒んないでよ…」
「もう…」
「はいはい。ごめんね?」
こうして頭をぽんぽんされるのが好き。
ううん。彼に触れられるのが好き
「ん…分かればいいよ…後、はいは一回」
「はい…」
「じゃあ行こっか」
「分かった」
彼と手を繋ぐのも、もう当たり前みたいになっちゃったけど、いつまで経ってもキュンってなる。
それに、最初の頃とは違って、指と指を絡ませて繋ぐのは、凄く特別感があって、ちょっとぽ~ってなっちゃうの
「あ…!」
「ほら!よそ見してるから…大丈夫?」
躓きそうになった私を優しく支えてくれて、その優しさもずっと変わらなくて…
一緒にいる時間が増えれば増えるほど、私はどんどん彼のことを好きになっていった
だから…だから、卒業してもずっと一緒にいたかった私は、颯馬と同じ大学を目指すことにしたんだ
(それに…)
「ねえ…颯馬…?」
「どうしたの?」
「同じ大学に受かったら…また一緒にいてくれる?」
「もし、伊織と大学が別々になったって、俺は一緒にいるよ」
「うん…うん!」
あの頃より明るく、もっとカッコよくなった彼の隣を…私はこの場所を、もう誰にも譲るつもりなんてなかった
「あれ?なんでニヤけてるの?」
「う、うるさいわよ!いいの!!」
……………………………………………
作者の月那です。
最終話まで読んでいただき、ありがとうございました。
すっかり明るくなった如月くんと、相変わらずデレデレの三条さんですが、この先も二人仲良く、楽しく過ごしてくれそうですね。
この物語は、当初から40~45話くらいで完結させる予定でした。
ですので、途中、展開が急な場面も多々あったかと思います。そこはまた今後の課題として取り組み、次に生かせればと思いますので、よろしければご意見や感想を教えていただければ幸いです。
それでは…
最後に改めまして、最終話まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
またどこか別のお話でお会いすることが出来れば、私としましても嬉しい限りです。
月那でした
【完結】私に全く興味なんてなさそうだったから悔しくてただデレさせようとしてただけなのに、いつの間にか私の方がデレていたなんて 月那 @tsukina-fs
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