いよいよ待ったなしの事態が着々と近づいている気がしますね…それなのに、物語自体は非常に淡々としているので、かえってそこに言いようのない非情な空気を感じます。
セルフィーネからの反応を望むべくもない濁流を前に、思わず佇むカウティスが涙を誘います。会えない相手を心から思うという行為は、わずかにでも期待を寄せてしまうもの…本当に、こういった事なんです。短い描写ですが、彼の焦りと喪失感が痛いほど伝わりました。
聞いていた話との相違は、嫌な妄想ばかりを膨らませてしまうもの。戻って来なかったら…と想像しただけで彼を飲み込もうとする黒い感情こそが、きっとザクバラから受け継がれてしまっている詛なのでしょうね。もしその想像が現実になってしまったら…と思うと、今のカウティスさえも儚く感じられてしまうという現状が、改めて恐ろしく感じられてしまいます。
そんな中にあって、やっぱりラードが頼もしい。「励ましや気休めを口にしない」とありましたが、彼の場合、側近として傍にいながらも、心を巧みに程よい距離に置いているんですよね。踏む込み過ぎず、かといって看過しない…まだ若いカウティスにとっては、自分の考える余地を残して貰えているわけで、本当に理想的な側近です。私にもパンとスープを持ってきて欲しいです。
ネイクーンでは、思わず「良くやった!」と言ってしまったほどの魔術師の巧みな報告によって、エルノート達が異変を知るところとなりました。ネイクーンの魔術師達の即時帰還が決定されたわけですが、セルフィーネを脅す格好の材料でもある彼らをむざむざ手放す通達を、ザクバラがすんなり呑むとは到底思えないんですよね…。それどころか難癖を付けてきそうな気配すらあって、国家間でも徐々にきな臭い展開となってしまいそうな予感がしています。
そして問題のザクバラ、マジで問題でした…詛によってすっかり我を失ってしまっている非情なリィドウォル、そしてなーんにも考えていない犬ウェン、遂に腕を折りやがりました。…ちょっとだけ脱線するのですが、滅多に人が命を落としたりしない御作だからこそ、腕を折るという暴力的な行為が、より一層重く、そして凄惨に感じられてしまうんですよね。見逃せないうむむポイント(何故か可愛いらしいですね、ありがとうございます笑)です。
以前の返信に、叔父としての顔をカウティスに見せていたのが本来の彼…というお話がありましたが、そう考えると、正気を失ってからもう随分と経つ気もしています。国を思うあまり正気を逸脱し、詛にも蝕まれ、血の契約にはきつく縛られ…リィドウォルの人生とは何なんでしょう。こういう言い方は少し違うのかもしれませんが、あまりに惨めに思えてしまいます。
脅してまでセルフィーネに望む魔力の回復ですが、幽閉していた貴族から搾り取っているであろうその質の不快さは彼女には受け入れがたいものの様で…魔術を用いた通信でも「ふたつ前の技術」とありましたが、現実でもそうである様に、独裁を強いている様な国は、やはりやる事なす事、そして思考も、つくづく前時代なんですよね。精霊が人格を持ち、実体化するかどうかとやっているこの物語に於いて、魔力の「搾取」など、その良い例だと思います。リィドウォルは他国で冷え〇タが流通している事さえ、当然知らないんでしょうね…(笑)
今回のタイトルですが、水面の下は大荒れです。良くまぁ水面に波紋が立たずに済んでいるものだと思いますが、これが前後編ですもんね…嫌な予感しかしませんが、次、読みます。
作者からの返信
続けて読んで下さってありがとうございます。コメントも嬉しいです。
ネイクーン側から見た水面下として書いているザクバラ国内は、大荒れです。
そして、ただひたすら耐えるカウティスの内にも濁流が。
仰る通り、詛です。
ドカンと大きく事件は起きていないようで、ジワジワ時間は過ぎていきます。どこで動くか、ご期待下さい。
ここでもラードを褒めて頂き、ありがとうございます。
様々なことを乗り越えて来ての今、この主従は安定の関係ですね。
苦しい状況を書くにあたり、ラードとハルミアンは私にとっても助け手でした。
パンとスープは食べちゃったようですよ(笑)。
『滅多に人が命を落としたりしない』
はい。その分、痛い部分や次話の気持ち悪い部分(すみません)は、わざと書くようにしています。
『独裁を強いている様な国は〜…前時代』
本当にそう思います。
固執して新しいことを積極的に取り込めないというか…。
冷え○タなんて、夢の道具ですよ(笑)。
リィドウォルを含め、ザクバラ国は変わることができるのか…。
物語は更に荒れてきますが、どうか続けてお楽しみ頂ければ嬉しいです。
ありがとうございました!
こんにちは。
ああ、可哀想なセルフィーネ。
とうとう、ネイクーンの魔術士の腕が、目の前で折られて……。見せしめのためだけに。
その悪意に、セルフィーネはぞっとした事でしょう。
リィドウォル〜、その魔力はマズイんだよ~。もっと美味い酒……いや、美味い魔力を用意しなよ〜。
まあ、上記のは冗談として、リィドウォルの事情もわかります。彼も生命をかけて、やりとげようとしている事がある……。
作者からの返信
こんばんは。
読んで下さってありがとうございます。
とうとうセルフィーネの前で暴力行為が行われてしまいました。
セルフィーネは恐れ、萎縮してしまいます。
ザクバラ国の者達は、彼女を理解しきれていません…。
『その魔力はマズイんだよ』
まさに、ですね。
美味い酒は、個人的には採用したいですが(笑)。
はい。リィドウォルは命を捨ててでもやり遂げたいことがあるのです…。
コメントを頂けて嬉しいです。
ありがとうございました!