【完結】 言い訳男子と素直女子

ファンタスティック小説家

言い訳 vs 素直

 親友のカエデが好きな人がてきたと言ってきた。その相手は親友のマサトだという。


 俺はふたりにとっての親友だが、カエデとマサトはほとんど面識がないらしい。


 なので俺はパドロンを頼みんだ。


「マサトくんと仲良くなるの手伝ってください……!」


 親友のカエデに頼まれては仕方ない。

 俺はふたりを見守るポジションに就任した。


 マサトはイケメンインテリ眼鏡男子。

 カエデはゆるふわ小動物女子。

 

 2人の関係は釣り合っておらず、プライドの塊のようなマサトに対して、いつだってカエデはおどおどしているのだ。


 作戦開始から3ヶ月がすぎた。

 状況はまるで動いていなかった。


「ほう。勉強を教えて欲しいだと?」

 

 マサトは眼鏡をクイッとあげながら言う。


「う、うん、マサトくんと一緒に勉強できたら楽しいなぁって」


 カエデは遠慮がちにたずねる。

 この3ヶ月みずから何かに誘うことなどしなかったカエデだ。おおきな進歩である。


「勉強は楽しさでやるものじゃあない。カエデ、お前は根本的に勘違いしている。俺はイチリュウ大学を目指して勉強してるんだ。つまり自分の勉強で大変ということだ」

「そ、そうだよね、ごめん」

「しかし、思えばお前に勉強を教えることで、アウトプットを通した記憶の定着を試みるのは悪くない。やれやれ仕方ない。すこしだけ付き合ってやる」

「本当に? やったあ!」


 マサトは素直ではない。


「マサトくん、休日にね、一緒に映画を見に行きたいなぁって」

「俺は忙しい。生徒会の仕事もあるし、文化祭の準備だってはじまってる。期末テストも近づいてきてる。遊んでいる時間があると思うか」

「そ、そうだよね……ごめんなさい、わがまま言って」

「しかし、ちょうどいい息抜きを探していた。運が良かったなカエデ。さあ、ともに映画を見に行くぞ!」


 マサトは握り拳をつきあげて高らかに言う。

 絶対に楽しみにしているし、内心喜んでいそうだが、そこには言及しないでおこう。


「マサトくん、やっぱり脈なしかなぁ……」


 ある日、カエデに相談をされた。

 相談内容はマサトとの関係だ。


「いつもマサトくんには気を使わせてばかりで、でも優しいから、嫌々に私に付き合ってくれてて」


 これは重症だ。

 マサトの言い訳を間に受けている。


 俺は諭した。

 あれは雑魚言い訳野郎だと。

 カエデは可愛くて、愛嬌があるのだから、本気になれば一瞬でやつの言い訳ごとき砕けるのだと。そもそとマサトはどう見てもカエデのこと気に入ってるだろう、と。


 ある雪の日、俺はカエデをけしかけた。

 マサトのツンデレを破る手法をふきこんだ。


「マサトくん、あったかーい!」

 

 カエデはマサトの手を握った。

 普段絶対にやらない行動だ。顔は真っ赤で、恥ずかしさで燃えあがりそうである。


 マサトの親友である俺にはわかる。 

 奴は女子の甘えに弱いはずだ。


「………………ふ、ふん、なにを企んでいるかはまるでわからない。だ、だが、俺の体温が温かいのは事実だ。カエデよりずっと身体が大きいからな。温かいと言うのなら付き合ってやらなくはない」

 

 頬は染まり、いまにも笑みが溢れそうだが、ギリギリで耐えている。


 奴の言い訳を崩すにはまだ少しかかりそうだ。


「マサトくん」


 カエデはおもむろに抱きついた。

 突然の反撃。戦略兵器級の不意打ち。

 マサトは動くことすら叶わず、おでこをこすりこすりされてしまう。


「あの、すみません……」

「ぇ、ぁぁ」

「そ、その、私、マサトくんのこと好きで……大好きなんです。よかったら、その、お付き合い、ほしいです」

「……あぁ」


 勝負はついた。

 やはり言い訳では恋に勝てないようである。

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