やっちまったあと

「部外者の僕が部室に入ってゆくわけにもいきませんし」


 そう言って痴女先輩には先に行ってもらう。


「部室の戸を開ける必要とかあるかもしれませんけど、そっちは大丈夫ですよね?」


 今は両手が塞がっているが、布地を押さえるだけなら努力すれば片手でも十分だ。一度手を離した時にポロリするかもしれないので人の目がないところでする必要があるとしてもそこはトイレによるとかやりようはある訳で。


「いや、どうするんだよ?!」


 そうして痴女先輩が廊下の向こう、曲がり角の先に消えたところで僕は僕自身にツッコんだ。

 さっきまでなぜあんなに冷静でいられたかがわからない。


「『危ないところでした』じゃないよ! 今も危ないよ! 主に僕の社会的な立ち位置が!」


 あの場は勢いで切り抜けたが、もう教室の面々も我に返った頃だろう。正直、教室に戻りたくない。


「しかもアレ、確実に先輩のファンクラブにも伝わるだろうし」


 怒り狂ったファンクラブのメンバーが僕を襲撃してきてもおかしくない。


「詰んでませんかね、これ?」


 思わず天井を僕は仰いで。


「竹之内ぃぃぃぃ!」

「っ」


 声に振り返ると血の涙すら流しそうな形相で教室に残してきた痴女先輩のファンクラブメンバーが駆けてくるのが見えた。


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