きみはどうする
「うん」
真っ先に逃げるという選択肢が浮かんだが、今の僕の体型は変わらずぽっちゃり系だ。走るのには向いてない。
「機敏なデブ」
そう称される人がいることも理解しているが、僕がそのカテゴリに入っていないこと、瞬間的に攻撃を避けるとかならともかく追いかけて来る相手から逃げるのが苦手であることも理解していた。
ちなみに後者を理解したのは痴女先輩に隠れてこっそり運動してみようかとした時のこと、とかではなく普通に体育の授業で体を動かして理解させられたことだ。
「授業で運動する分には先輩も文句は言えないよね」
と思い至って出来るだけ授業中は身体を動かそうと思った僕だが、ぽっちゃりするくらい日頃から運動してなかった身で人一倍体を動かそうとか無理がありすぎた。
「とりあえずっ」
逃げ切るのは無理と判断した僕は、近くにあった戸を開け飛び込むように中に入った。どこであるかを確認しているような暇はない。
「理科室か。よかった、次が体育で着替え中の教室とかじゃなくて……あ」
背もたれのない椅子が実験台の上に逆さで並ぶ光景に僕はそこがどこであるかを理解し、ポツリ零した自分の言葉で状況がさらに最悪になった可能性に思い至る。
「危なかった……って、言ってられる場合でもないですね」
外の廊下をドカドカ乱暴に駆けてくる音がするのだ。音の主を何とかしてやり過ごさなければ痴女先輩の後も追えない。
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