おちつけ、深呼吸だ
「すぅ」
たっぷり息を吸い込んで一秒止め、肺の中の空気をゆっくりと吐き出してゆく。こう、何か叫びながらトイレの個室を飛び出してゆきたい気持ちでいっぱいだったが、そんなことをしてもどうにもならないことはわかっていた。
「助けてくれ」
そう誰でもいいから助言を求めたいほどに今の僕は窮地だ。ピンポイントにトイレで遭遇した推定同学年の生徒二人の片方がが僕の独り言を把握していたという異様な状況。
ちなみに同学年と推定したのは、他の学年の生徒からするとこのトイレは教室から遠く不便だし、僕と同学年の生徒が多用するという点から別学年の生徒にとっては気分的に使いづらいだろうなと言う見立てが由来だが、まぁそれはどうでもいい。
「重要なのは――」
たまたま遭遇した同学年の生徒が知ってるぐらいだから、あの独り言を僕が漏らしたことを知ってる学生の数はそれなりに存在するだろうという悪夢的事実だ。
北海道以外のキッチンで見かける方も居るかもしれない害虫が一匹見かければ数十匹なんて言われるのと理屈は同じ。無作為に選んだサンプルに含まれる割合を全体に置き換えた時相当な数になるという奴だ。
もう個別に黙っててくれるようお願いして奇跡的にそれが成功してもどうにかなるような人数はきっと超えてしまっていると思う。さっきのトイレの二人も片方が話題に出したことでもう一人にも知られてしまった。現在進行形で僕の不名誉なデマは広がり続けてると見てよく、拡散を防ぐに手段を問わず動いたとしても授業の間の放課という限られた時間だけでは無理だ。
「詰んでるんですが?」
匙を投げるを通り越してマスドライバーで宇宙へ打ち上げるくらいにはお手上げの状況。
「すべてが夢でしたで済んだらなぁ」
と空想に逃げてしまうぐらいにはもう進退窮まっている。もし、この状況で逆転の一手があるとすれば、思いつくのは一つだけ。
「よりインパクトのある別の情報をばら撒いて上書きする」
それぐらいだ。正直、僕が自分のおっぱいを揉んで我慢してるだとかいう回収日に出し忘れて一週間が経過しちゃった夏場の生ごみよりも酷いデマを上書きできる話ってどんなんだよと自分でも思ってしまうぐらいではあるのだが。
「もう」
いっそのこと開き直って痴女先輩と公衆の面前でイチャイチャでもしてしまえばいいだろうか。痴女先輩も初恋がどうとか言っていたのだから、NOとは言われない気がする。
「うん」
やった瞬間、先輩を慕ってる生徒に刺されるんじゃないかって気もするけれども。
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追い込まれるとひとって吹っ切れちゃったりしますよね?
竹痴くんは正気に戻れるのか? 続きます、たぶん。
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