それからひと月の時が流れた
「ふぁぁ」
僕はあくびしつつ目をしぱつかせていた。歩くことは可能だが両腕はギプス的なモノで固定されていて指は動くがモノを持つには制限がかかる。
「まぁ、腕の具合見れば使うなって言われるのはもっともだし」
退屈は人を殺すと言うが、この両腕では読書も厳しいし携帯ゲーム機も持てない。幸いテレビのある病室ではあるが、放送されてる番組って偏りがあって自分の趣味に合わない番組しか放送されてない時ってあると思うのだ。
そこは前世でもそうだった気がするが。
「通信制の学校の授業放送でも……見るのはいいけど鉛筆もシャーペンも持つなって言われてるからなぁ」
登校して授業なんて受けられないから置いて行かれないようにたまに学業系の番組も見るが、授業とは書いて覚えてた部分もあるんだなと実感する時間になっている。
こう、テレビ見てただけじゃ全部は頭に入らないというか身についてない気がするのだ。
「地味に辛い」
街中で魔法を使って推定保護観察処分中の身では瞑想も出来ないし、寝て時間を潰そうにも寝すぎて眠れなくなる恐れがあり。
「ひと月で退院できるって話ではあるけど」
時々警察の人が来るものだから、痴女先輩もアレを我慢せねばならず。僕はその辺り瞑想できないこと以外の痛痒は感じてないのだけれど、まぁ、我慢を強いられた痴女先輩は自分のおっぱいを弄って耐えているらしい。
「ある意味元の鞘に収まったというか……」
ちじょせんぱい は ちじょせんぱい だと おもいました。
「ただ、あのブレなさを考えると……退院した後が怖い」
飢えた野獣が座敷犬に見えるぐらいの変態になってるんじゃとか失礼なことを考えてしまう自分が居て。
「たぶん、現実逃避なんだろうなぁ」
警察の方からは僕の提供した情報が何か作用したなんて話は聞かない。ただ、戸籍もパスポートもない密入国者数名が例の団体と関係してるようで、ひょっとしたら僕の話してた人物がその中にいるかもと言われた程度だ。
「警察が僕の予想を超えて有能だった件について」
原作では割と無能に描写されていたというのにどうしてこうなったと思うところがある。きっと主人公を活躍させるシナリオの都合何だろうけども。
「大丈夫、だよね?」
そう信じたいと思いつつ病室とのお付き合いは続いて、僕が退院できたのは、見立ての通り、キッチリ一か月後だった。
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