意味不明の供述

「前世でプレイしたゲームの原作知識です」


 なんて言える筈もない。言ったところで信じて貰えず、精神の方のお医者さんを呼ばれるだろうが。

 ちょうど病院だったね、こいつは都合がいいやと笑い飛ばせるような状況でもない。


「それは」


 言い訳に使えそうなモノは二つ。一つは魔法研究会で見た探索者が魔法を使う映像を真似たというものだ。

 とは言え、見ただけで真似出来るなら探索科の授業のいくつかは要らなくなるし魔法だってそんな簡単なモノじゃない。


「映像を見て真似したらできちゃいました」


 そう言われて信じる人間の割合は低いだろう。もっとも、これが信じられた場合、中学生が魔法を使えるようになってしまう可能性を鑑みて探索者の魔法を行使する映像が放送禁止に追い込まれてしまうだろうが。

 故にここに一つ付け加える。魔法を使えるようにしてしまう特別な映像を手に入れたということにするのだ。


「交差したスコップと地球」


 原作のラスボスが所属する組織のシンボルがそれなのだが。一般市民がダンジョンと探索者を忌避するように奴らは探索者を装った上で時折使っていけない筈の魔法を使って事件を起こしたりする。

 他にもダンジョン探索科を中退した元学生に危険な魔法を教えて街中で事件を起こさせたりも原作ではしていたらしい。ここで「らしい」と付くのは、一部の事件は伝聞など直接原作主人公がかかわったモノでないからだが。


「僕は魔法研究会に所属してるんですが、どこでそれを知ったのか声をかけてきた人が居て」


 罪の形で擦り付けるには打って付けの相手だ。


「こう、外国人みたいでした。妙に日本語が不自然で」


 なぜなら、件の組織には裏に居る某国の外交官や工作員も出入りしているのだから。外交官の方は外交官特権で逮捕や抑留と言ったことができなかったはずだし、工作員の方は簡単に捕まっているような奴にはやっていられない。


「その人が教えてくれました」


 幸い、原作には何人か工作員らしき人物も出て来て、大まかな人相と性別、年恰好くらいならわかる。そこから捕まりそうにない人物をあげておけばいい訳だ。原作でもドロップアウトした元学生に危険な魔法を教えたりしてるのだから完全な嘘でもないし。


「ただ、秘密にする様にとも言われていましたから、この事は――」


 一つだけ、偽りの密告をした僕を組織の方が狙ってくる展開も考えられたので、警察の男性には僕が情報源であることは伏せてくれともお願いしておく。


「しかし、外国人か……どこの国の人間かもわかるかね?」

「あ、はい。使ってたのは日本語ですが……」


 おそらくそうではないか程度ですけど供前置きしつつ出身国についてはキッチリ教えておく。

 ダンジョンの無い国の人間が魔法を教えるという点については矛盾しているようにも聞こえるが、どこかの高校の探索科の魔法職の教科書を手に入れることが出来るなら、不可能ではない。実演は不可能だろうが元々まだ魔法を扱えない知識もない学生をいっぱしの魔法使いにするための教材なのだ。原作で中退した学生が教えられた魔法も魔法の仕組みを教科書で理解したとある工作員がオリジナルで組み上げたモノと言う設定があったりしたぐらいだ。


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