三章『変わった二人、その先と周囲』
「誰だお前」というやつだろうか
「……竹痴君」
一日で退院とはならず、病室生活は僕が目覚めて二日目。お見舞いと言う形で部屋にやってきた先輩は様子が違っていた。
「先輩? どうしたんです?」
態度が違う。先輩は変態で痴女ではあったが、生徒会長らしく堂々としているのが常だった。だから、今僕の前に居るように真正面を見ず、視線を合わせないということが珍しいどころか別人のようで。
「先輩の偽物?!」
なんて口にするほど僕もアレではないが、言ってしまっておかしくない程に挙動は別人で。
「その、キミが……キミが私を抱えて……私を抱いて漏らしていたことは殆ど聞こえていたんだ。こう――」
「え゛」
痴女先輩は言葉の最中ではあったが、僕は凍り付いた。
「僕のおっぱいに顔を埋めようが揉もうがもう構いませんから――この際ですから直揉みも許可します」
思い出したのは、先輩を助けたくて己が口にした言葉。そう、僕はあの時やらかしていた。
「うああああっ」
やらかした、本当にやらかした。なるほど先輩の様子もおかしくなるわけだ。
「言質はとっているからな。キミのおっぱいを堪能させてもらいたい、直に!」
きっとそう言いたいが奇跡的にも痴女先輩に恥じらいの成分がいくらか残っていたとしたなら、今の様子も納得だ。
「しかし竹痴君、病室でと言うのは背徳的でクるものがあるな。そう思わないか?」
なんて続けることまでありそうである。いや、痴女先輩ならもっとアレなことを言うかもしれない。まずいことになった、と口に出しかねない程にヤバい状況ではないだろうか。
「あ、あの、先輩?」
「キミの声は全部聞こえていた。最後まで、私を助けようとする声が。悩むの声も、悲痛な声も、自分を奮い立たせようとする声も……みんな。だがな、それを思い出したら……私は、キミの顔をまともに見られなくなってしまってな……」
「えっ」
ビクビクしつつ先輩の様子を窺った僕は、先輩から飛び出してきた予想外の言葉に硬直する。
「どうしたというのだろうな、私は。後遺症の様なものはないと医者からは聞いたのだが……キミを前にすると、こう」
なんだこの生き物。
「ぼく の しってる ちじょ せんぱい じゃない」
とは流石に声に出したわけではないが、かなり失礼なことを胸中で吐き出していた。
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完全復活とはいきませんが若干時間が出来たので。
不定期更新になる可能性もありますが、ご理解ください。
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