まどろみの終わり。その先


「あ……れ?」


 手が触れたのは布の感触。柔らかいが、先輩の服でもなければ僕の服でもない。


「せんぱ……い? っ先輩!? ぐっ」


 それどころか抱いていた先輩の重さまで消えていて、眩しさを覚えながらも目開け、跳ね起きて走った激痛に顔が歪む。


「は? ここ……って」


 まだぼやけた視界でもあの時の場所でないことはわかった。ぼやけた輪郭でわかるのは、室内であること。感覚を含めれば、今まで僕はこの部屋で寝かせられていたことがわかって。


「びょう、しつ……」


 あの後、結局僕は意識を取り戻せなかったのか、それともただひたすら回復魔法を使っていた為に負荷で記憶さえ飛んでいるのか。


「僕は……」


 先輩を助けられたのか、それさえわからない。とりあえずここは病院か何かの一室だということはわかるが、個室の様で他にベッドもなく人も居ない。


「病院なら呼べば人は来る……はず、ぐっ」


 ナースコールと言うものへ思い至り、腕を動かそうとして激痛にうめき声が漏れた。


「ぐ、あ……そうか、身体強化の」


 腕の痛みの原因などほかに考えられない。先輩の上から資材をどかす為にかけた魔法の強度か振るった力かあるいはその両方か。咄嗟のぶっつけ本番が加減を間違えたせいで両腕がいかれてしまっているのだろう。


「けど」


 腕が大丈夫だったとしても、僕は人を呼べるだろうか。結局先輩があの後どうなったのかもわからない。飛んでる記憶の間に助けられていたならいい。


「僕が何か聞かなくても――」


 人を呼んで、来た人の表情を見れば、どうなったかを察せてしまうんじゃないか。そこに先輩が助からなかったことを見てしまったら、僕は。


「ダメだ」


 たぶん、コールボタンを見つけても、それを何とか押せる気がしない。怖くて、何があったかを知るのが怖くて。


「っ」


 ぼやけていた視界が像を結び始め、視力は戻り始めていたけれど。ベッドから半身を起こしたままの姿勢で僕はコールボタンを探すために動き出すことも出来ずにいた。


*********************************************************

 気が付けば病院に担ぎ込まれてたらしき主人公。


 先輩の安否やいかに。

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