瑞谷・千代2
「ふざけるな」
そう思う反面納得する部分もあった。資材の下敷きになったのだ。
「このままじゃいけない!」
同時にそうも思って僕は次の魔法を即座に行使する。回復魔法だ。
「僕が、回復職なら――」
ないものねだりであることはわかっている。ダンジョンの入り口を潜ることすらできていない僕は探索者としての職に着いてはいない。ついたとしても魔法使いに使える回復魔法は初歩的で効果も心もとないものだけだ。
「それでもっ」
記憶を頼りに魔法使いとしての力量に物を言わせ、強引に回復魔法を行使する。
「快癒しなくてもっ、せめて救急車なり回復職のひとが来るまで――」
「竹痴、君」
些少なりとも効果を発揮したらしい回復魔法のおかげか、それとも。ぐったりしていた痴女先輩が僕を呼ぶ。
「無、茶を」
「そんなのどうでもいいです! かばってくれたんでしょう、僕を?」
先輩が僕を突き飛ばして身代わりになったことぐらい、状況を見ればわかる。突き飛ばされた時は何が何だかわからなかったとしても。
「責任は取ってもらいますから! こっちも責任はとりますので!」
覚悟は決めた。というか魔法を無許可で行使しておいて今更だけれど。
「そんな……ことより、胸に……キミの胸に、顔を……埋めさせ、てく……いいかな?」
「っ、ホントブレませんね、こんな状況で!」
資材が落下した時かなりの音がしたはずだし、吊っていたということはクレーンのオペレーターか何かがこの状況を見ているかもしれない。
「いいですよ、ただし――」
生きるのを諦めたら、許さない。痴女先輩のソレが最後のお願いに聞こえて僕は先輩を睨みつける。回復魔法の行使もやめない。
「学校のみんなに内緒とかもう全部無理じゃないですか! ですから責任は半分背負って貰いますからね!」
「あり、がと」
軽口をたたく視界が何故か滲む。不安と認めたくない何かの予感を僕は全力で考えないことにして、痴女先輩を抱き起す。回復魔法を使い続けながら。
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お出かけの疲れで、もう限界っぽい。
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