頼りにするは親の金、あとコネ


「これがお前の欲しがっていた杖と果物だ」


 この日も先輩とのアレを放課後にした後で帰宅した僕は、その日の夜、今世の父に呼び止められ。二つの品を差し出されていた。


「ありがとう、父さん」

「なぁに、このぐらい。しかし良かったのか? もっと強力な武器や道具も手に入れることはできたのだぞ?」

「ううん、僕はこれが欲しかったんだ」


 ありがとうともう一回礼を言って僕は杖と果物を抱え、自分の部屋へ向かった。


「っ、やったぁ!」


 部屋の扉を閉めるなり、快哉を叫ぶ。父に入手を頼んでいた品のうち果物は魔法を扱う源となる体内魔力の最大値を永続的印微量増幅するいわばステータスアップのアイテムだ。


「本来魔法を使うにはこの体内魔力を感じ取ったり動かしたりとかが出来るようになる訓練を積まなきゃいけないんだけど……」


 手に入れた果実を食べることで、体内魔力が増幅すれば自身の肉体に起こる変化を実感するだけでかの過程をすっ飛ばせるのだ。

 原作では高校入学前にキャラメイクの時点で能力ボーナスを得られる性格診断的なモノがあり、そこで一定以上の体内魔力上昇値を満たしてれば主人公もこの過程をスキップできる。


「主人公も実際にはこの果実を食べて体内魔力を感じ取る方法とかを会得したってことになってるんだよな」


 キャラ作成時に得られる能力などを所持してる理由をそうして説明づけていたわけだが、僕はこれを利用して中学時代に魔法使いとしてのフライングスタートを切ってしまおうという訳だ。


「原作みたいに強力な武器をねだったりするわけでもないし」


 これぐらいはお目こぼし願いたいところだ。ちなみに果物と一緒に貰った杖の方は魔法の発動体であると同時に魔法の威力を固定で微量上昇、魔法の射程を延長するという効果を持つ。


「割と序盤で手に入るし後で上位互換の杖がいくつも出てくるからなぁ」


 ぶっちゃけ、高校の購買部でも一年の中盤以降なら購入可能というありふれた品だったりするのだ。一年の内に購入するには結構苦労するぐらいには高価だけれども。

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