★僕の素質<高校編からの回想>


「ファイアッ、ボール!」


 直訳すると火の玉というそれはファンタジーなんかではおなじみなのではないだろうか。

 僕の翳した杖から生まれたソレは轟と唸りを上げて飛び、剣と盾で武装したこちらの身長の半分ほどの小鬼の群れを呑み込んだ。


「ふぅ、まぁ中級ゴブリンの小隊くらいならこの程度の魔法で十分ではある訳だけど……」


 完全に後衛クラスだよなと僕は自身の装備と戦い方を顧みて思う。


「魔法剣士」


 魔法による遠距離攻撃も剣による近接戦闘もこなせる万能クラス。これが原作における僕の職業であり、原作の僕は親の金とコネで手に入れた強力な魔法の剣のスペックだよりで大きな顔をしていた。


「まぁ、太っている上にロクな訓練してないから近接戦闘が可能な部分は殆ど死んでたんだけど」


 それでも魔法使いとしてはかなりの素質があったらしい。魔法の剣を媒介に強力な魔法を使えたのとこの時には形成されてた腰巾着メンバーとのパーティーを組み、探索実習において学年内ではそこそこ優秀な探索成績を収めていたのを覚えている。


「まぁ、今の僕はソロだし、剣士部分はほぼオミットしちゃってるんだけどさ」


 後衛職としての才能があることを知っていたのと同行者がいては原作知識を活かせないこともあってのチョイスだが、今のところこれはうまく行っていた。

 敵の出現地点がある程度わかっているので、周辺を徘徊している可能性も加味して索敵。これでだいたいこちらの方が先に敵を発見できるので、あとは遠距離から魔法をぶち込んで一掃するだけを繰り返して僕は進んでいた。


「千代先輩が、いや……」


  ただ、こうして一人でダンジョンに潜っていると後衛クラスのソロ探索故の心元なさか、単にさみしく思うのかふいに誰かいてくれたらなとも思ってしまう訳で。


「よりによってそこで真っ先に出てくるのが痴女先輩なんですかねぇ……」


 自分の発想に自分でツッコミを入れてしまう。中学時代のアレコレを鑑みれば仕方ない点はあるのかもしれないけれども。

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