噂をすれば影、遅効性


「どうしたの? 竹之内君、何か悩み事?」


 昨日悪役キャラ3セットの一人だったなぁなんて思いつつ見ていたからだろうか、痴女先輩に妙な迫られ、絡まれ方をした翌日、僕は梅之内・由香に話しかけられていた。


「あー、大したことじゃないよ。先週の新聞についてたパズルに解けないのがあっただけでさ」


 悩み事があるのは確かだが、誰かに相談できる類のモノではない。前世の記憶が云々は正気を疑われること間違いないし、スルーされたとしても原作知識なんてモノは軽々しく他言できるようなモノでもない。

 まして、由香の本性を知っているこちらからみれば絶対に相談しちゃダメな相手である。


「そう。竹之内君、新聞のパズル解いてるんだ……」

「欲しい景品の懸賞付きだった時があってさ。それから惰性でなんとなくね」


 嘘をつくときは真実を何割か織り交ぜてとは何が出典だっただろうか。僕は前世から懸賞関連は結構気にするタチだった。


「そういう訳だからさ、ありがとうね」


 気にかけてくれた礼だけは一応口にして、僕は会話を切り上げる。放っておけば原作通りに破滅する相手ではあるし、その破滅に関しても自業自得なのだ。


「それじゃ」


 原作を顧みても破滅から助けようと思えるような人物ではなかったし、とりあえず深くかかわりあいにならなければ以後も問題ないだろう。

 ただ、悩んでるように見える姿を目撃されたというのは僕が迂闊だったとも言えて、席を立つとその足で教室を出た。


「はぁ」


 本当に迂闊だった。その足でトイレに入ると周囲に誰も居ないのを確認して嘆息する。


「本当に何やってるんだか……」


 原作知識もまるで活かせてない。ダンジョンの探索が許可されるのもダンジョン探索実習があるのも高校に入ってからで今行動に移せることはあまりないにしても、もう少し何かやれるのではないか。鏡に映った僕の顔は情けなさそうにこちらを見ていた。

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