水の渦

higansugimade

水の渦



 人は反省をすることができる。


 この期に及んでいいわけをなさるのですか?


 だってほんとうに寝違えていたんだもの。


 その感覚は素直ですけどね。


 かつての大人は今の私。


 そうやってまたはぐらかして。


 かつての子供は今後のあなた。


 寝違えた件、そのように受理しましたので、私。


 神がかった感情の渦。


 え?


 渦の根を止めて静かな水面へと向かわせよう。


 水面? 水ですか?


 人は生きる。


 生命は、水ですか?


 そう、水が大切。


 でも、水のイメージは、いいですね。


 青のイメージ。


 薄い、透明な、ブルーのイメージ。


 水玉って、いいよね。


 いいですね。


 青地に白。


 白地に青。


 ふわふわと。


 ふわふわと、ね。


 とにかく、彼は、張り切り生きた。


 そうだったかしら。そうでしょうね。


 張り切って生きるべきだった。


 みな、そうですよ。


 バタフライナイフのように、その刃先の届く範囲で、次から次へと空から何から切り裂いた。


 そういう言い方はどうかと思いますが。ナイフの例えは、ちょっと。


 短さが、言いたい。


 腕の長さ、プラスちょっと、ということですね。


 そのようにして生を地に這わせた。


 私は、這いずり回るかのようなその言い方はどうかと思いますが。


 人を克服した。彼は、そのように考えた。対等な関係であることを我がこととして認め、他に認めさせるよう要求までする。師匠だの大将だのと崇め奉らなくてもよい。もし私が誰かに対して師匠など大将などと声を発することがあればそれは、現状、皮肉である。彼はそうも言っていた。

 ねえ、きみ、それはとても素直なことだよ。


 確かに素直ではあります。


 それは素敵なことだよ。


 それは素敵なことだとは言えない。


 もがき苦しんだということだろう。


 苦しみは、本人にしかわからない。


 本人には自覚がなかった。


 それはどうかわからない。


 彼は流行りに生きた。


 それも、どうかはわからない。


 手足が動かなくなり朽ち果てた。


 苦しみは、本人にしかわからない。


 

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