自分への言い訳を考える
たい焼き。
運命の出会い
かれこれ、30分は経つだろうか。
私は足から根がはってしまったかのごとく、とあるガラスケースの前から動けなくなってしまった。
目の前のガラスケースの中には、14金の万年筆。
昔ながらのデザインを大きく変えずに長く販売していて、この佇まいがレトロ感があって心をくすぐる。
このご時世に金のペン先、諭吉でおつりが来る万年筆なんて相当レア。
先日、彼からホワイトデーとしてもらったタイプライター型キーボードと合わせて写真をとればSNS映え間違いなし、懐かしさと現在のガジェットのもつ真新しさで閲覧数はぐっと伸びるだろう。
ひとつでも記事がバズれば、他の記事も見てくれるはず。
私が先日、半泣きで完成させた七夕スイーツの記事もきっと読まれるはずだ。
そう!
私は頑張った!
突然7キーが打てなくなってしまったキーボードを使って七夕ネタのウェブ記事を完成させた。
結局、修理に見せると接触不良という事で基盤の点検と念入りな掃除をされて私の元へ帰ってきた。
それからは特に不調になることもなく、快適に使えている。
去年から始めたウェブライター業も少しずつ仕事をもらえるようになってきて、軽い気持ちで始めたものだったが今はとても楽しく記事を書けている。
記事を書くにあたって多方面にアンテナをはり、今の流行をあれこれ追っていくこと自体、学生気分に戻ったようで懐かしい。
おかげで心が若返ってた気がするし、ほんの少しだけどウェブ記事でお金ももらえるようになった。
そう。
これは、私のウェブライター業として日々頑張っている自分へのご褒美だ。
それに、SNS映えを狙えるので今後のための先行投資だ。
金を使っているから、困ったときには悪くない値段で売れもするだろう。
そう。
決して欲望のままに突っ走っている訳ではないのだ。
必要経費だ。
「すみませーん、これくださーい」
私は心の中で言い訳しながら、万年筆を指さした。
自分への言い訳を考える たい焼き。 @natsu8u
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