死人の口出し
「というわけで実際に来てみたわけだけど……いなくない?」
ヒーデルックさんと一緒に門の前まで来てみたけれど、肝心の幽霊の姿はいくら探しても見つからなかった。
門番に聞いてみてもしばらくは見てないと言っていて当の本人ですら見間違いだったかもしれないという始末。そういえば私たちは実際に幽霊を見たわけじゃないから、まだそれが本当かどうか分かっていないんだった。
「いえ、気配は感じます。ここにいるのは間違いないですけど、恐らく日中だから活動が活発じゃないんだと思いますね。私の魔術なら強引に引っ張りだすこともできますけど、どうしますか?」
「それはちょっと怖いかもなんで、やめときましょう」
彼女にこのまま頼んでいたら、これ以上に大変なことになるような気がする。引き下がった彼女と共に私たちは門の前で日が暮れるのを待つことにした。そうすればきっと噂通りなら何かが起こるに違いない。夜ご飯を早めにとって四人は門の前で何かが起こるのをひたすらに待つ。だけど日が暮れて月が暗闇を照らすようになってからも、変化の一つすらない。交代の時間になったのか、門番の人が代わって退勤していくのを見届けてからもただただ銅像のように待つだけ。
いい加減に限界を迎え始めていたレイルは、しりとりを始めようと提案したが早い段階で彼自身が終わらせるのを何度も繰り返した結果、苛立ちを押さえられなくなったヲルスは散歩に行くと立ち上がってどこかに行ってしまった。
「ここまでしても何もないってことはたぶん、私が魔術を使った後にまた何かの要因を受けてしまったのかもしれないです。それを調べてみるのも手かも」
日も暮れてからしばらく経ち月夜に目が慣れてきた頃、ヲルスは頭が冷えたのかおもむろに私たちのところに戻ってきた。
「さっきは勝手に抜けてすまない。その間に色々考えてみたんだが、もう少しこの土地について調べてみないか。きっと文献なら図書館に行けば見つかるはずだ。何か手掛かりがあれば、どうして俺たちが見ることができないのかも分かるはず」
ヲルスの言う通りに図書館で四人は本を探すことにした。以前ヒーデルックさんが調べていたこともあって、目星がだいたいは付いている。あとはロノウェ先生に聞けばその場所まで案内してくれるはず。
「なぜワシがそんなめんどくさいことをせねばならんのじゃ」
暫く探していてやっと本棚の裏に見つけた彼女に聞くとふんぞり返りながら裏に行こうとするので慌てて呼び留める。さすがに私たちだけでこの中からピンポイントで本を見つけるなんて一日じゃ絶対無理だし目の前にこの場所を一番よく知っている人がいるんだからなんとしても教えてもらわないと。だがどこかに行こうとした彼女の足を止めたのは私たちの言葉ではなく、シレ先輩の一言だった。
「仕事だからですよロノウェ先生。それとも今日のおやつも無しにしますか?」
「わ、分かったわ!教えればいいんじゃろ教えれば!」
「あとでちゃんと来てくださいね?」
そうなると早かった。あっという間に探していた本は集まって、ロノウェ先生は早々に行ってしまった。机に置かれた本はざっと数えても20はある。これを読んでいるだけでも日が暮れてしまいそうだ。
「待ってロノウェ先生!」
私は本棚の角を曲がろうとしていた彼女を大声で呼び留めた。その小さな体でたくさん動いたからか疲れた様子で振り返る。「なんじゃ、まだ何か探し物か?」という顔でこちらに向かってきてくれたのでここはひとつということでお願いをしてみることにする。
「この本、全部読んで要約してくれたりしませんか?」
「な、ワシを翻訳機にでも使うつもりか!」
「もちろんタダとは言いません。私の故郷で凄い美味しいクッキーのお店があるんです。こんど帰るときに袋いっぱいのを持ってきますから」
「……む、それは」
「じゃあ俺も実家から何か菓子を送る様に言っておこう。きっとロノウェという名を聞けば良いものが届くはずだ」
「…………やればいいんじゃろ、やれば!その代わりさっきの話は違えるなよ」
そういうと彼女の目の色は一瞬で変わる。10分も経たずしてすべての本を読み終えると最後の一冊を閉じて小さく息を吐いた。目の色はいつの間にか戻っていて心なしかその眼には少しだけ哀愁が漂っているように見える。
「確かにこれは難しい話かもしれんな。だがヒーデルックといったな、屍術師であれば十分にその死霊をどうするべきは分かっているのじゃろ?」
ヒーデルックさんは静かに頷いた。彼女の本職ともいえるそれについては三人とも口を挟めるような知識も実力もない。それならここはたぶん任せておいた方がいい。
「それなら、やりましょうみなさん。多分これが終わるころには夏休みも終わっちゃいますけどいいですか?」
「それはもちろんです。二人ともいいよね?」
二人とも頷いて私たちは見えなくなってしまった霊の問題を解決するためにヒーデルックさんの指示に従うことにする。
お菓子という最大の献上品を得ることができると知っているロノウェ先生は、四人がそうしてこれから何かを成そうとしているのを見届けるとまた静かに図書館の奥へと向かう。後に隠れて寝ているのが見つかって彼女は夜遅くまで本の整理をさせられることになるとは知らず。
悪魔殺しの学園録 日朝 柳 @5234
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