後輩が俺のベッドで寝ていた言い訳
竜田川高架線
いつまで経っても妻にしてくれないから、通い妻の立場で我慢してるんです!
今日も2時間残業だった。たった2時間だが、それが毎日続いて土日も出勤となると、体と精神的の疲れが地味に蓄積していく。
今日で14連勤目だ。そうでもしないと工期が間に合わないから仕方がない、というのが言い訳だ。法律的にはアウトだが、勤怠管理では休んだことにしておけばバレないというカラクリだ。
仕事終わりにスーパーまで足を運ぶ気になれず、コンビニでカップラーメンを買って帰る。家に帰ったら、まず洗濯機を回して、その間にシャワーを浴びて、飯を食って……と可能な限り早く寝れるよう段取りを考える。
家に付いて、部屋の明かりをつけると、違和感に気付く。
ベッドの布団が膨らんでいる。
恐る恐る、布団をめくってみる。
「うわっ……あ、何だお前か……空き巣かと思った」
驚いて損した。居たのは、学生時代の後輩だ。いつの間にか合鍵を作られていて、よく家にかってに上がり込んでくるのだ。
曰く「ご両親に安否確認を求められるので」というごもっともらしい言い訳を述べたが、悲しいことに両親は放任主義で心配というものをされたことがない。
「今日はまた何でベッドに潜ってんだよ」
「えっとそれはですね先輩、疲れている先輩のために布団を温めておこうかと思って。それに若い女のフローラルな香り付き!」
「言い訳は以上か? なら出ていけ。お察しの通り、疲れてるんだよ」
「そんな、酷いですよ先輩! 残業続きで疲れた先輩を癒やして差し上げようと思ったのに!」
「見苦しいぞ。さっさと帰れ」
「そんな! 若い女を夜道に放り出すので!?」
後輩は頑なにベッドから降りようとはせずに、ジタバタと喚いている。
「もうお前もいい歳なんだから、ウチに通うような真似は止せよ」
「通い妻なのだから、通うのは当然でしょう!?」
「お前を妻にした覚えはない」
「だーかーらー、いつまで経っても妻にしてくれないから、通い妻の立場で我慢してるんです!」
「なんだその言い訳は。俺のせいか」
「そうですよ!!」
後輩が俺のベッドで寝ていた言い訳 竜田川高架線 @koukasen
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