米川くんのひとりごと ~いいわけ編~

篠崎 時博

米川くんのひとりごと いいわけ編

 良いことしようとしたけど、ダメだったな……。


「読んでおいて」って言われた資料は適当にしか読んでないし、「落とし物探して」って言われたけど、一緒に探さないで「別の人にお願いしてください」って言っちゃったし。


 ダメだなぁ。


 あ、あと眠くなるのは分かっていたけど、お昼いっぱい食べちゃった。

 ……だってお腹空かない?

 腹八分目ってよくいうけど、それじゃあなんだか足りない感じがしちゃうんだ。


 そのせいでちょっと午後大変だったんだけどね……。


 いやいや、寝てないよ!

 そこはなんとか、コーヒーを流し込みましたからっ!

 

 でも不思議。

 結構食べたつもりなのに、帰る頃にはすっかりお腹空いてるんだよね。


 こうやって体重が増えていくのかな……。

 いやいや、お昼に食べたものは、エネルギーとして午後の仕事に全て使われたに違いない。


 うん、きっとそう。

 

 ――さて、今日の夕飯は何にしようかな。

 久しぶりにハンバーグにしようかな。

 あ……、でもハンバーグって手間がかかるんだよな。

 

 それなら、肉じゃなくて魚を焼くだけとか!

 うーん、……でも魚焼きグリルの後片付けが面倒くさいんだよなぁ。


 今日もう、なんだかんだで疲れたし、もうレトルトでいっか。


 ってあー、ダメダメ。


 こうやって最近、レトルトとか惣菜ばっかりに頼っちゃうんだよね。

 

 なんだか、いいわけばっかりの自分。

 良くないなぁ。

 ズルくて弱い自分をかばっちゃうのは、良くない。



 でも、


 でもね、


 僕はもうずっと、いいわけしている。


 弱い自分を庇ってる。

 

 だって、ほら。今もこうして君に話をしてしまう。


 白い目で見られてるなんてさ、もうとっくに気づいてるよ。


 だけど、


 だけどこうしてないと、君という存在がいなくなってしまいそうだから。


 消えてしまうんじゃないかと思うから。


「怖いから」、「寂しいから」なんて、こんなのいいわけだよね。

 

 ……でも、もう少しだけ、このいいわけに付き合ってくれる?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

米川くんのひとりごと ~いいわけ編~ 篠崎 時博 @shinozaki21

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ