ChatGPTにプロットを書かせてみた。

天見ひつじ

ミステリのプロットを書かせてみた。

 タイトルの通り、話題のAI「ChatGPT」を使って小説のプロットを作成させました。結論から言うと、提示すべき謎のとっかかりを探したり、最終的な解決に至るまでのミスリード部分のアイデア出しには使えるレベルになっていると思います。


 反面、トリックやアリバイまで踏みこむと具体性を欠いたり内容が陳腐だったりとそのままでは使えない感じになります(使ってるのが無料版なのも影響してるかも)。最初の状況設定が甘いせいで望んだ方向性からズレたりと反省点もありました。


 以下はChatGPTとの実際のやり取りです。いわゆる『黒後家蜘蛛の会』的な、登場人物の会話を中心に進行し、最終的に安楽椅子型の探偵が解決する形のミステリを想定してプロットを作成させています。わかりやすくするため、発話者を明記したり改行、段落下げを行っています。「 」内は指示および回答、地の文は回答を受けての所感や次の質問を考えるに当たっての思考を書いています。


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天見ひつじ(以下「作者」)

「エルフやドワーフなどが存在するファンタジー世界を舞台にしたミステリ作品を書きます。解くべき謎として、一見するととてもそうはなりそうにない不思議なシチュエーションの案を出しなさい」



ChatGPT(以下「AI」)

「以下は、ファンタジー世界を舞台にしたミステリ作品のための、不思議なシチュエーションの案です。


1.王国の宝物庫から盗まれたダイヤモンドが、宝物庫に閉じ込められたままになっていることが発覚する。盗みが成立していることは確かだが、宝物庫の厳重な警備のため、どのようにしてダイヤモンドを盗んだのかが謎である。


2.エルフの一族が、数百年前に失われたとされる魔法の聖杯を手に入れると主張する。聖杯は、エルフの村がある森の奥深くに隠されているというが、誰もその場所を知らない。


3.高名なドワーフの宝石職人が、ある夜突然姿を消す。彼は、新しい宝石のコレクションを作っていたが、彼の工房には宝石が一つも残されていない。


4.王国の王女が、夜中に自室から姿を消す。彼女は厳重な警備の下に置かれており、どうやって逃げ出したのかが謎である。


5.魔法使いの一団が、森の中に建てられた小さな村を訪れる。彼らは、村人たちに、彼らが森の精霊たちから受け取った「神聖な光」を使って、村を浄化することができると主張するが、村人たちは彼らに不信感を抱いている。


これらのシチュエーションをもとに、ユニークなファンタジー世界のミステリを作り出すことができます」



 ほんの10秒足らずでアイデアが5個出てきました。ミステリとして提示するには端的すぎて魅力に欠けますが、この速さと気軽さはちょっと真似できません。なのでAIがどこをミステリと考えているのかを掘ってみます。



作者

「上記のシチュエーションのどこが不思議なのか説明しなさい」



AI

「以下は、前回提供したファンタジー世界を舞台にした不思議なシチュエーションの案について、どこが不思議なのかの説明です。


1.王国の宝物庫から盗まれたダイヤモンドが、宝物庫に閉じ込められたままになっていることが発覚する。このシチュエーションが不思議なのは、厳重な警備下にあるはずの宝物庫からダイヤモンドが盗まれたということ自体が不思議であり、宝物庫のセキュリティシステムがどうして突破されたのかが謎であることです。


2.エルフの一族が、数百年前に失われたとされる魔法の聖杯を手に入れると主張する。このシチュエーションが不思議なのは、数百年前に失われたとされる魔法の聖杯が、なぜ今になってエルフの一族の手に渡ったのかが謎であることです。


3.高名なドワーフの宝石職人が、ある夜突然姿を消す。このシチュエーションが不思議なのは、宝石職人が持っていた宝石が一つも残されていないということであり、彼がどこかに持っていってしまったのか、それとも何者かに盗まれたのかが謎であることです。


4.王国の王女が、夜中に自室から姿を消す。このシチュエーションが不思議なのは、厳重な警備の下にある王女がどうして逃げ出したのかが謎であることです。


5.魔法使いの一団が、森の中に建てられた小さな村を訪れる。このシチュエーションが不思議なのは、彼らが森の精霊たちから受け取った「神聖な光」を使って、村を浄化することができると主張していることであり、村人たちが彼らに不信感を抱いていることも不思議な点の一つです」



 ちょっと具体的になりました。このまま5案を並行で進めていくと深掘りが難しそうなので、適当にひとつ選んで具体的なことを聞いていくことにします。



作者

「3.の選択肢について肉付けを行います。ドワーフの宝石職人が名声を得るに至ったエピソードを出しなさい」



AI

「ドワーフの宝石職人は、若い頃から宝石加工の技術に熱心に取り組み、常に新しい技術を習得してきました。彼の仕事は精巧で美しく、その評判は次第に広まっていきました。


 ある日、彼は王国の王からの依頼を受けて、王冠の宝石を担当することになりました。ドワーフの宝石職人は、これを自分にとっての大きなチャレンジととらえ、一年近くの時間をかけて、美しく輝く宝石を選び、磨き上げることに専念しました。


 その結果、彼は美しい王冠を完成させ、王国中に称賛されることになりました。このことがきっかけとなり、彼はますます名声を高めていき、多くの王侯貴族たちからの依頼を受けるようになりました。彼の宝石加工は、その精巧さと美しさによって、王国中で最高峰の技術と評価されるようになったのです」



 特におもしろみのない回答ですね……表現も「精巧で美しく」「最高峰の技術」といった表面的なものに留まり、具体的なすごさが見えてきません。リアリティを付与するため、具体的なエピソードや他者との差異が欲しいところです。



作者

「彼の宝石研磨技術が他者とどのように差別化されているのか具体的に説明しなさい」



AI

「彼の宝石研磨技術が他者と差別化されている点は、彼が常に最新の技術を追求していることです。


 彼は、自らの技術を改善するために、新しい研磨機械を導入し、宝石の表面に微細な模様を刻む技術を独自に開発しました。この技術により、宝石の表面に模様を刻むことで、光の反射角度を変化させ、より美しく輝く効果を生み出すことができたのです。


 また、彼は宝石の選別にも非常に厳格で、宝石の種類や特性に応じた適切な研磨方法を熟知していました。彼は、磨き上げた宝石の美しさを最大限に引き出すために、微妙な手磨きを行い、研磨剤の選択や研磨圧力の調整など、細かな部分にまでこだわっていたのです。


 このように、彼の宝石研磨技術が他者と差別化されている点は、常に最新の技術を追求し、独自の技術を開発したこと、そして宝石の選別や手磨きにおいて、細かな部分にまでこだわっていることにあります」



 ちょっと具体的になりました。最新技術を導入する好奇心や貪欲さ、機械操作のエキスパートであるだけでなく手磨きも併用する柔軟さ、宝石の質や研磨剤にもこだわり抜くといったキャラクターが見えてきます。

 中心となる人物はひとまずこれでいいでしょう。では次はドワーフの宝石職人が失踪するに至った謎についてプロットを作成してもらいます。



作者

「ドワーフの宝石職人が姿を消すに至った経緯について、登場人物はいくつかの誤った解答について討議し合い、最終的にはそれらの誤った解答も踏まえた上で真の回答が導き出されます。以上の流れに沿ったプロットを作成しなさい」



AI

「ある日、ドワーフの宝石職人であるベリンダーが姿を消してしまった。彼女はエルフの顧客から依頼を受けて、一連の宝石研磨作業を行っていた。しかし、予定されていた締め切りまでに彼女からの連絡がなく、エルフたちは不安に駆られた。


 エルフたちは、ベリンダーの工房を訪れるが、彼女の姿はなく、工房の中にはまだ研磨途中の宝石が散らばっていた。さらに、彼女の周りには、宝石を研磨する際に使用する機材や材料が散乱していた。


 エルフたちはすぐに、この事件についてドワーフの法律執行機関に通報し、調査が始まった。登場人物たちは、ベリンダーが姿を消した原因についていくつかの説を立て始めた。


 最初の説は、ベリンダーが単に逃亡した可能性があるというものだった。しかし、彼女は真面目で信頼できる人物として知られており、この説は信じがたいものであった。


 次に、ベリンダーが工房内で事故に遭い、負傷してしまったという説が提唱された。しかし、彼女の身体の痕跡や証拠が見つからなかったため、この説は否定された。


 最後に、工房に侵入した泥棒によってベリンダーが誘拐されたという説が浮上した。しかし、窓やドアには強い施錠が施されており、また、盗まれたものはなかったため、この説も疑われた。


 登場人物たちは、これまでの説を検討したが、それぞれに欠点があった。しかし、最終的には、ベリンダーの宝石研磨技術が高いことから、彼女を嫉妬する者がいる可能性があるという考えに至った。


 調査を進めるうちに、ベリンダーが以前から嫉妬されていたことが判明した。調査の結果、彼女を狙った嫉妬深い競合他社の研磨師が犯人であることが判明した。この研磨師は、自分の技術がベリンダーのそれよりも優れていると考えており、彼女が自分にとって脅威となる存在だと思っていた。彼は、ベリンダーを誘拐し、彼女の宝石研磨技術を奪おうとしていたのだった。


 研磨師は、調査が進む中で浮上してきた疑いを否定するために、自分が犯人であることを告白した。彼は、ベリンダーを自宅に監禁し、宝石研磨の技術やノウハウを強制的に引き出そうとしたことを認めた。


 研磨師は、ベリンダーに対する過剰な嫉妬心から、彼女を誘拐したものの、彼女が誘拐されたことが明るみに出ることを恐れ、彼女を殺害してしまった。その後、彼女の遺体を森に運び、隠蔽したのだった。


 この事件の真相が明らかになり、研磨師は法律によって裁かれることになった。彼の行動は、宝石研磨師たちの間で大きな話題となり、彼の技術が偽物であったことが明らかになったため、彼の名声は大きく損なわれた。


 一方、ベリンダーの死は、ドワーフたちやエルフたちの間で大きな悲しみを引き起こし、彼女の技術や才能は、彼女の死を悼んで、たくさんの人々に讃えられることになった」



 いくつかの誤った推理、そして真の回答へ至るという要求を満たしつつ、謎の提示から解決までを押さえたプロットが出てきました。新たに犯人も出てきましたね。解決への流れがレストランの一室で行われる『黒後家蜘蛛の会』の形式から逸脱しますが、とりあえずこのまま進めます。



作者

「犯人の研磨師にはアリバイがあり、犯行は不可能だと考えられていました。研磨師であること、ドワーフという種族であることなどを活かしたアリバイ工作とはどのようなものであったか答えなさい」



AI

「研磨師のアリバイ工作は、彼がドワーフであることを活かしたものだった。彼は、ドワーフたちの一大イベントである『砥石祭』に参加していたと主張し、その間は一切外出していなかったと証言していた。この砥石祭は、ドワーフたちにとって非常に重要な行事であり、多くのドワーフたちが集まるため、アリバイの提供に適していた。


 また、研磨師は、自分がエメラルドの研磨に取り組んでいたこともアリバイになると主張していた。彼は、エメラルドの研磨には非常に時間がかかり、一日中作業に没頭することが多いと証言していたため、犯行現場にいた可能性は低いと考えられていた。


 しかし、最終的に研磨師が犯人であることが明らかになり、彼のアリバイは偽りであることが判明した。彼は、砥石祭には参加していたものの、一時的に場を離れて犯行に及んでいたのだった」



 うーん、微妙かつ矛盾した回答。何回か回答を再生成してみましたが、どれもぱっとせず……ざっくりしたアイデアの例示には向いてるけど、具体的なトリックやアリバイになると途端に陳腐な回答しか返ってこない印象を受けます。こちらをあっと言わせる気の利いた回答は無料で使える範囲だとまだ難しいかも。

 肝心の推理部分もあっさりし過ぎてるのでそこを深掘りしてもらいます。



作者

「アリバイ工作であることに探偵がなぜ気付いたのかも説明しなさい。探偵は安楽椅子探偵であり、現地には出向かず会話と質問のみで矛盾を突き、アリバイを崩壊させます」



AI

「探偵は、研磨師のアリバイについて疑問を持ち、彼のアリバイが崩れる可能性を探った。まず、砥石祭について詳細に質問をして、彼が参加した場所や時間帯、参加者たちの様子などを探った。次に、彼がエメラルドの研磨に取り組んでいたと主張した点について、研磨師にエメラルドの研磨の詳細を尋ね、その内容が彼の主張と合致しているかどうかを確認した。


 そして、探偵は、研磨師が犯人である可能性を疑い、彼の行動パターンについても調べた。その結果、砥石祭の間に彼が場を離れたことがあったことがわかり、彼のアリバイが偽りであることを突き止めたのだった。探偵は、砥石祭に参加したドワーフたちに話を聞いたり、研磨師の口から詳細を引き出したりすることで、矛盾点を見つけ、アリバイを崩壊させることができたのである」



 この先も色々質問してみたけど、あまり有益なやり取りはできなかったので、とりあえずここまで。


 最初のシチュエーション設定が甘かったせいで、現地での聞きこみや犯人との会話を推理の材料として使うことになっています。レストランの一室(一場面)で謎の提示から解決までを完結させる形式を想定していたのでそのままでは使えませんね。


 ざっくりした話の流れは見えたので、ここからの作りこみは作者がした方がよさそうです。個人的には「読者をミスリードするための枝葉」「否定するための推理」みたいな部分を書くのがけっこう苦痛だったりするので、陳腐でありきたりな推理のアイデアをざくざく出してくれるのは助かります。


 回答の精度もこの先どんどん上がっていくでしょうし、書き出しだけ書いて続きはAIで生成とか、プロットだけ与えて出力されたものを毎日更新とか、エタった小説を丸ごと読みこませて続きを書かせるとか、利用法はいくらでもありそうです。


 上手く使えば楽しい創作のパートナーになってくれるのは間違いないので、読者にAIを使っての執筆をぜひお勧めしたいと思います。今まで小説を書けなかった人もどんどん書けるようになるといいですよね。

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ChatGPTにプロットを書かせてみた。 天見ひつじ @izutis

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