第2話 言い訳くらいしてよ
「ごめん……」
彼はそう言って困ったように笑った。
「そんな言葉、聞きたくないのよ」
私は奥歯を噛みしめる。
「ごめん……」
そう繰り返す彼に、私は感情をぶつけた。
「なんか言ってよ。こんなのずるいじゃん……」
「ごめん……」
彼はやっぱり弱々しく笑いながら繰り返すだけ。
「ねぇ、言い訳くらいしてよ! 車に轢かれかけた女の子を助けてたんでしょ? そう言ってよ! 待ち合わせに来なかったのも、デートすっぽかしたのも、連絡してこなかったのも全部、全部許すから!」
私は祭壇に飾られた彼の遺影を掻き抱く。
「何か言ってったらぁ!」
泣き崩れた私の耳の奥では彼の最後の声がずっとリフレインしている。
「ごめん……」
遺影の彼は困ったような顔で微笑んでいる。
言い訳してよ 仁科佐和子 @sawako247
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます