言い訳して良い訳
ぐらにゅー島
好きじゃないから!
違う、好きじゃない。だって彼は私の大切な友達だから。
「今日はありがと!今度一緒に遊びに行きたいなぁ。」
ホワイトデーのお返しを貰ったその日の放課後、君にメールを送った。君にお返しもらえるなんて思って無くて。だから、会いに来てくれたときはドキッとした。
でも、これは恋じゃない。
君はイケメンだって同級生の中でも有名な人らしい。可愛い元カノがいたとかなんとか噂だって聞く。そんな人を好きになる訳ない。だって、私はそんなに可愛い訳じゃない。
彼と同じバンドメンバーの女の子は、私の幼馴染だった。彼女は去年、ホワイトデーのお返しなんて彼から貰っていないとそう言っていた。それを聞き、私の全身を血が駆け回る。顔がトマトみたいに真っ赤になるように。
違うんだ。これは恋心じゃない。ただ驚いたから、びっくりしたからってだけだから。だって気を遣ってくれただけかもしれないし、今年は誰にでもあげてたのかもしれないし。
「ほんとそれなー。遊び行きたい!」
君から返ってくるメッセージに一喜一憂。季節が周るように、くるくると私の心も変わっていくんだ。
君と仲良くなった理由の、好きなバンドのコンサートに誘ってみたりした。案外簡単にオッケーされてしまった、衝撃。君は女の子に慣れてるんだろうな、そう思ったらなんだか微妙な気分だったりして。淡々と、私のスケジュール帳が埋まっていく。
私が誘って、君がいいよって言ってくれて。それじゃ、まるで私の片想いでつらくって。君は私を友達だと思ってるのに、私はきっとそうじゃない。それならいっそ、君を好きじゃないって嘘をついて、隠した方がずっと簡単で。
「あ、待って。〜って映画知ってる?」
会話なんてそこで終わったものだと思ったのに、君が話しかけてくれて。
「知ってるよ。」
だから、君が返すように素っ気なく返事をする。
「今度の金曜日、一緒に観に行かない?」
同じように君も、私が返すような甘ったるいメールを送ってくる。
期待しちゃうのなんて、なんだかちょっとふわふわする。だから、君が私に恋に落ちていない理由を探してる。そして、私が君を好きじゃない理由を見つけてる。
言い訳して良い訳 ぐらにゅー島 @guranyu-to-
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