1‐2-2.
放課後は首にカメラを提げて外に出た。過去と今が重なった世界を二次元におさめて保管する。これが姉からカメラを貰った日から続けている趣味だった。自分の学校を敷地の外から写真を撮る。やはり、昔はこの場所は学校ではない。大型スーパーと黒いコンクリートで敷き詰められた何か(一〇〇〇年後にはない駐車場)がある。流石一〇〇〇年だ。今とはだいぶ違いすぎてそもそもなんの建物かも少し試行錯誤しなければ分からない。考えても分からないものも多数だ。
そして、もう一つの趣味。一〇〇〇年前のこの場所のマップを作ること。画面が浮き出るこの時代の携帯を使って線を書き込んでいく。自分の馴染みの町はだいたいできた。次はこっから東へマップを広げようと決めている。その前にどこかぬけがないか適当に歩いて確認して続きは明日にしようか。いや、神社のところへ行こう。
どこに神社があるかはもう覚えている。だからこそ、更なる道順を模索するべく別の道にから神社への方向へと足を進める。が、しかし、
「ちょっと、人の家の敷地に無断で入るんじゃ無いよ。」
「間違えた。」
たまに重なる幻像の道と今存在する道を勘違いして歩いてしまうことがある。またやってしまった。よく見ると鬼ばばぁで有名な人の家じゃないか。終わったな。呑気に空に向かって溜息をする。
「誰が鬼ばばぁだって?」
気づかぬまま声に出てたらしい。これはこれは世界滅亡案件だ。
「僕が言ったんじゃないよ。クラスの人が勝手にあだ名をつけてた。そもそもあなたの家がどこかなんて今日初めて知った。」
「へぇ、じゃああんたはあのバカ3年生らの一人じゃないんだね。」
「なにそれ。僕はこの間転校してきたからそんな肩書は知らないんだよね。何があったの?」
外で話すのもなんだという事で家に上がらせてもらいお茶を出してもらった。
「今年の8月にね、私の家に大量の総理大臣のチラシを張りやがったんだ。」
「何で?」
「両面テープだよ。大金払って業者に綺麗にはがしてもらったんだ。」
それは酷いな。どうして彼らはそんなことをしたんだろう。いや、理由はないんだろうな。したかったからしたんだ。お茶をすすっていると、上から一枚紙が落ちてきた。丁度頭にボンッと乗ったので、そのチラシを見てみる。
「『増税眼鏡』だ。」
おばあさんはびっくりしたような顔をしてこちらを見た。
「そのおっちゃんのことを知ってるのかい?」
僕は首を振って答えた。
「良く知らない。でも、たまに見る。」
一〇〇〇年前に落書きされたものを。
おばあさんの家から出て、今度こそ神社へ向かう。一〇〇〇年前の神社へ。
「こんにちは。今日も来てくれたの?」
今日も巫女のお姉さんの笑顔が可愛かった。
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