第一章 西条湊(小)
1‐1.-1.
僕、
「行ってきます。」
「ちょっと、湊。上履き忘れとるよ。」
「あ。」
気の抜けた声がでると、ママは呆れたようなでも笑って僕を送り出した。
「いってらっしゃい。」
「行ってきます。」
瓦礫や地割れ、土砂崩れ、液状化。そんなものが本当にあったのだろうか。そう思う程平和な日常が続いていく。いじめや事故なども特になく、怖くなるほど簡潔に不思議に思うほど憐れに思われながら今に至る。ただ一つだけ、未来が怖い。そして不安だ。この頃、無意識に死という恐怖が染みついていた。未だに解明できていない死の向こう側。この頃はくだらないこと考えてたなとは思っていた。産まれれて数年しか生きていないというのに。
同じ道を歩いて行く。今日も同じ道を。いつもと同じ。いつもと...いつも...いつ...いー・・・
「ここどこ?」
思考回路が固まって目線だけを泳がせる。右に左に、次は足を動かしてみる前を歩いたり後ろに下がったり。でも、どこをどう見ても自分が知ってる景色ではなかった。まずどうしようか。家に連絡を...。いや、誰か通りかかった人に道を訊けば問題は解決するかもしれない。二つの問題解決方法を導き出したところでどちらをとるか迷う。家に連絡をするを頭の中でシミュレーションしてみると、家に連絡を入れて気がづくのはママだ。ママが電話に出てできることと言えば問題解決のためにさらなる指示をされることだけだろう。例えば「交番に行け。」や「迎えに行くからそこを動くな。」など。それに対して通りかかった人に道を訊くを選択すればいち早く学校へ辿りつけるかもしれない。ならば後者をとることに決まりだ。長々と思考を巡らせて答えを導き出すことに成功すると、後ろから女性の声がした。どうやら自分から声を掛ける手間が省けたようだ。
「そこの坊や。」
後ろを振り返ると、なんと巫女の衣装を着た綺麗なお姉さんだった。今の時代ではとても珍しい神社が彼女の背後に存在している。驚きとお姉さんの美しさに頭が混乱して顔と耳まで赤らめた。目線を合わせようとするもなんだか虹色の光が出ているようで眩しくて合わせられない。
「迷子になっちゃったの?どこの学校の子?案内しようか?」
頭の中で「君の声しか光がないから。君の名前を月に歌わせてる。」というある歌の一節が浮かんだ。それはとても一瞬だったため、何を思い出したのかはすぐに忘れてしまった。
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