大魔法の後始末の前に

真偽ゆらり

責任の所在

「私は悪くない」


 巨大なクレーターの前で魔法使いの格好をした少女は叫ぶ。


「私は悪くない!」


 焼け果てた大地に住宅地だった面影は一切残っていない。


 大地の組成成分とその上にあったモノが焼き潰されて結合した物体に覆われた斜面の硬度は高くないようで、余波の衝撃で破損したライフラインを支える配管やケーブルから漏れた水やガスの圧力で無数に穴があいている。


 ある穴からはガスに漏電で着火したのか火が噴き出し、ある穴からは濁った水が噴き出して地獄の様相を呈しつつあった。


 関係者らしき男二人が口を開く。


「住民の避難が完了していたとはいえ、迷宮崩壊スタンピードを収束させるのにここまでやる必要があったのかね?」

「ギルマス、迷宮崩壊を止めてくれた彼女に何を……」


「私は悪くない」


「言い訳かね、まぁ君がどんな言い訳をしようと世間様は何と言うかな」


「私は、悪くない」


 そう言って彼女は携帯端末から動画をホログラム投影する。


「避難は完了した、町の被害は気にせず思いっ切りやりたまえ。町の復旧は公共事業になる。家は保険で建て替えさせればいい。それと公共事業の入札に一枚噛んで儲けようじゃないか」


 ギルマスと呼ばれた男がいやらしい笑顔で喋る様子が動画には映っていた。


「ギルマス……」


 動画はまだ終わらない。


「全ての責任を被せる為に彼女を大魔法のどさくさに紛れて殺すか、それとも生きてる彼女に責任をなすり付けて矢面に立たせるか——」


 隠し撮りされた映像の中のギルマスと呼ばれた男は次々と己の悪事を漏らしていく。


「ギルマス、貴方って人は……」

「くそ、この動画が出回る前にお前達を——」

「無駄ですよギルマス。あの動画、SNSを上げてあるのを再生してますから」

「——こ……なに!?」

「おまけに生配信中みたいですし」


 ホログラムを投影している携帯端末には赤い光が点り、画面には録画中の文字が表示されていた。


「私は悪くない」

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大魔法の後始末の前に 真偽ゆらり @Silvanote

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