3 一目惚れって……一目惚れってこと?

「凛ちゃん、どうして抱きついちゃったの?」

「だって……なんとなく…」

「そっか…なんとなくか……」


解放された俺と近藤は、姫乃凛容疑者に事情聴取を行ってるところである。

進展はほとんど見られないがね。


どうやらこの凛とやらの雰囲気はふわふわしている。

もうモッフモフである。


近藤とのしりとりでいよいよ終盤に差し掛かってきたところ、重たそうに目を開いた姫乃は、俺を目に入れた瞬間再び二度寝をしようという余罪を犯そうとした。

まあ近藤さんによって未遂で終わったが。


あの柔らかい感触が寂しくも感じたが、まだ人生を謳歌しきれていない俺は、檻の中はまだ早すぎると、不屈の理性でなんとか耐え切ったのだった。


話を戻そう。

姫乃さんである。

彼女はどうして俺に抱きついたのか自分でもよく分かっていないようで、それでさっきの問答だ。

まあ理由があったとしても驚きなのだが。


「でも……なんか…ポカポカした」

「っ!……そっか」

「うん。彼の腕の中、安心する」

「えーっと……?」


どうしよう。

よくわからない俺がおかしいのだろうか。

ここは異世界なのか。

いつの間に俺は転生したんだ…。

狼狽えの極地である。


「もしかしてさ……遠藤くんのこと…好き?」

「わかんない…でも…安心する」

「うん。これは恋だね。しかも一目惚れか〜」

「ん…?ちょっと待て。それはおかしい。俺のどこに一目惚れする要素がある?言えるのか、ああ?」

「なんでちょっと喧嘩腰なの?あのね遠藤くん。恋は盲目なの。理屈じゃないの。わかる?」

「はい。分かりません」

「そうよね。まあそんなことはどうでもいいの。実際に起きているわけだしね。それよりもまず優先すべきは……」

「優先すべきは……?」

「遠藤くんってLOINやってる?まずは私たちと連絡先交換しましょう。凛ちゃんを応援するためにもね…」

「それってもう確定なの?姫乃もそれでいいのか?」

「わかんない……けど。悪くはない、と思う…」


消え入りそうな声で呟く姫乃は、すごく可愛くて。

俺は耐えられず目を逸らした。

姫乃の顔が薄赤く染まっていたのように見えたのは、気のせいに違いない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初対面で美少女に抱きつかれたことある?ない?そうだよな。俺はある。 @Latte90

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ