いいわけ

KKモントレイユ

いいわけ

 先生の机には花を生けた花瓶があります。先生が大切にしている花瓶です。掃除の時間、みこちゃんが机の近くを雑巾がけしていると、タカシくんとケンタくんが走ってきて、みこちゃんにぶつかりました。みこちゃんは先生の机にぶつかり花瓶を落としてしまいました。花瓶は床に落ちて割れ、花は散らばりました。花瓶が割れた音に佐織ちゃんが振り返りました。

みこちゃんが困った顔をして割れた花瓶と花を拾おうとしていました。

「なにしてるの! みこちゃんが落としたの?」

みこちゃんは首を振ります。

正義感の強い佐織ちゃんは、

「先生に言わなきゃ。先生の大事な花瓶よ」

先生が走ってきました。

「まあ花瓶を割ってしまったの?」

「みこちゃんが落としました。わたし見ました」

佐織ちゃんがいいます。

困った顔をする先生

「みこちゃん、あなたが花瓶を落としたの?」

「ごめんなさい」

みこちゃんが泣きそうな顔をしていいます。

「いいでしょう」

先生はやさしくいいました。

「この花瓶は大事なものではありません。みんなが休み時間に騒いでいるのは知ってます。元気でいいことです。みんな、よく聞いてください。今の世の中は大人も子供も、なにかあるとすぐに人を悪者にしたり嘘をついたりする人ばかりです。誰が花瓶を割ったか、先生は見てません。でも、ひとりひとり自分がどういう行動をとったか、どういうことを言ったか、それが本当か、嘘か、自分にはわかっていると思います。もし噓をついている人がいたら、その人はずっと忘れることができないでしょう。あのとき本当のことを言っておけばよかったと思うでしょう。もしかしたら本当のことを知っている人がいて、それを言われるんじゃないか……嘘は自分を苦しめます。友達を大切にしましょうね」

みんな下を向いて何もいえませんでした。

 みこちゃんと先生が割れた花瓶を片付けるのを誰も手伝うことができませんでした。

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