ごめん、冒険の旅には出られません

第13話 今、牢の中にいます。

 妖精が人を殺そうとしたから、とっちめるついでに妖精の集落を滅ぼして、

 最初の街から王都に着いて、書類提出から数秒で逮捕されちゃったや……。


 今は春だから、空調なしで寒いも暑いも思わないのが、まあ幸いだけど。

 あと、魔法規制をかけられなかったのも意外だ。

 ボクの故郷じゃ瞬間移動テレポートや攻撃魔法は言わずもがな、変身・変化魔法の類とかも規制する首輪を着けさせられるとか、魔法を一時的に使えなくするお薬とか飲まされるらしいのに。


 でも、ボク、ここから今すぐ出ようとは思わないよ。

 死に方が、討たれ死にから刑死に変わるだけだろうし。

 あ、でも、「新天地で、集落滅ぼして刑死」って、ちょっとかっこ悪いかな……?


 そんなこんなでボクは、処刑こそ避けられたけど、死ぬまで王都のために働けって言われたよ。

 無期懲役って奴かな。

 で、ボクは今、王都のための仕事を、なんていうか、すごい転々させられてる……。


 まず、水魔法の適性を買われて牢で発生する洗い物の仕事を依頼されて、

 食器洗いが三ヶ月、布類の洗濯が六ヶ月で辞めさせられたよ。


 次は土魔法の適性を買われて、土木工事を手伝ったら、

 三ヶ月で新しい村役場を建築してそのまま辞めさせられたよ。

 

 辞めさせられたときに言われたセリフは全部同じ。

「お前は命どころか、他の囚人の仕事まで根こそぎ奪うのか!?」


 なにがそんなに問題なの? ボクはただ、仕事の効率化を提案して、

 機構システム構築をちょっと手伝っただけなのに……。



 次はなんの仕事するんだろ、と昼食を終えて、独居房でゴロゴロしてると、

 荷物をまとめて面会室に来いって言われたよ。

 死ぬまで働けって言われた割には、まだ一年しか働いてないんだけどな……と思いながら指示に従うボク。


 面会室で先に座っていたのは、直線的な軍服なのに、髪のシルエットや顔つきが、どことなくゴージャスな女性。

 シンプルな面会室が全くもって似合わない人が、いったいボクに何の用?

「なるほど、悪くない面構えだ。お前、私の直属部隊に入れ」

「直属、部隊……?」


 ボクの効率的な仕事ぶりや、妖精の集落を滅ぼせる圧倒的パワーの両方を活かせるのは、戦場しかないと熱弁する、

 この派手なシルエットの女性の名前は、キャサティー・ターゴさん。


 戦場か……。考えてみれば冒険者って、ある程度、自分で戦う相手を選べる、

 無意識に自分が死なない相手を選べるから、死ぬにはあんまり向いてなかったかも。


「戦場って、武器はなんです? 近接系? 銃火器?」

「……かわいい顔して、ずいぶん積極的だな?」

「これでも、三十半ばの大人なんで」

 ボクがそう答えたら、また年上か……となんか頭を抱えられつつも、

 武器は派遣先、行く先による、いざとなったら素手でも戦うと答え、改めてボクの意志を、死への覚悟を問うキャサティーさん。


「銃の使用経験はないですけど、やれと言うならやります、死ぬ気で!」

「交渉成立だな」

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2024年5月31日 23:45

愛するおばあちゃんが死んで以来、何度殺しても死ねないボクは、毒魔法とかいろいろ強過ぎて向こうが死にまくるけど、死ねない理由が知りたい!〜『トリプルマジックストリート 第一部』外伝 霜月二十三 @vEAqs1123

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