彼氏の言い訳

せにな

第1話

「あなたが言い訳を言っていいわけないでしょ!」


 上目遣いにプクーと頬を膨らませた彼女がこちらを睨んでくる。


「言い訳を……して、いいわけ……ぷぷ」


 口を押えて一生懸命に笑いをこらえようとする俺にさらに腹が立ってしまったのか、両頬をつねってくる。


「笑うなぁ!私は真面目に言ってるの!」

「ごめんごめんー」


 緩む口元を堪えながら彼女の頭を撫でると嬉しそうに目を閉じる。

 と思ったが、目を開き俺の腕を掴んでくる。


「──って違う!私は本当に怒ってるの!」

「だから俺は知らないってー」

「言い訳は聞きたくないの!なんで私のプリンを食べたのか教えてって言ってるの!」

「昨日起きてきた時に食べたじゃんー」

「覚えてないから知らない!」

「んな自己中な……」

「食べ物の恨みは大きいんだから!」


 さらに頬を膨らませる彼女は俺の腕は掴むものの、自分の頭を撫でている手を離そうとはしない。


「また今度買ってくるから許してー」

「……何個?」

「ん〜3個かなー」

「少ないー!」


 残った片方の手でお腹をポコポコと叩いてくる。


「そんな食べたら太る──」


 そう言った瞬間、彼女の軽い叩きが男子顔負けの殴りへと変化する。

 彼女の頭から手を離し、前かがみにお腹を押さえていると拳を握った彼女が睨んでくる。


「それは言ってはいけないよ?」

「ご、ごめんなさい」

「許しませんよ?」


 未だに前かがみになっている俺は苦笑を浮かばせながら手を顔の前で合わせる。


「ほんっとごめんー」

「もう二度と言わない?」

「言わない言わない」

「なら許してあげる」


 腕を組んでぷいっと顔を背ける彼女。

 そんな彼女を見ながらお腹をさする。


「でも少しだけ言い訳してもいい?」

「なに?まだ引っ張るっていうの?」

「いや〜別に引き伸ばすつもりは無いんだけど、少しだけ言い訳したいなーって」


 横目で俺を睨みつけながら口を開く彼女。


「あなたが言い訳を言っていいわけないでしょ」

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彼氏の言い訳 せにな @senina

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