ズル休み
旗尾 鉄
第1話
一か月前。婚約者のリカと旅行に行ってから、妙なことが起きる。
リカとは付き合って二年。今度のリカの誕生日に、婚姻届を役所に出す予定でいる。
俺は安月給の底辺リーマン、リカはフリーターだから金がない。式も挙げず入籍だけのつもりだった。でもリカが新婚旅行代わりにというので、会社を一日休んで二泊三日で旅行に出かけたのだ。
行き先はリカにお任せだった。リカが選んだのはスキー場と温泉、あと神社を巡った。神社は知る人ぞ知るパワースポットらしい。最後に参拝した神社で、リカはこんなことを言っていた。
「ここね、正直の神様なんだって」
「えー、聞いたことないなあ」
「ほんとほんと。嘘ついてもホントになるんだって」
妙なことが起きたのは、旅行から帰った月曜日だった。実家から電話があり、親戚が亡くなったというのだ。ふと思い出した。会社を休むいいわけに、親戚に不幸があって、と言ったことを。そのときは妙な偶然だとしか思わなかった。
二度目は一週間ほど前、寝坊して遅刻しそうな日だった。腹痛で病院に行くと言って会社を休んだら、午後になって急に腹痛が起き、病院に行くはめになった。
そして、今日はリカの誕生日だ。今日は会社を休んで、婚姻届を二人で出しに行って、二人で過ごそうと約束していた。だが先週、腹痛の件で一度ズル休みしている。それなりの理由がないと、二週連続で休みますは気まずい。かといって、妙な偶然も気になる。
俺は考えて、弟が交通事故に遭ったので付き添う、と、いいわけの電話をして休みを貰った。俺には弟はいない。いいわけが現実になることはないのだ。俺たちは予定通り役所へ行き、新婚初日を二人で楽しんだ。
翌日、リカのスマホが鳴った。リカの顔色が青ざめる。
「弟が、交通事故に遭ったって」
背筋に嫌な汗を感じた。リカに弟がいることを失念していた。昨日から彼は、俺の
ズル休み 旗尾 鉄 @hatao_iron
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