KAC20237 何でも口に入れたがるお年頃
星都ハナス
👶👶
「誠に申し訳ございません。僕も一度でいいからやってみたかったんです」
眉間にシワを寄せたあと、目頭を押さえて山村アキラは深々とお辞儀をした。
猛省しているという本人だが、記者の辛辣な質問は続いた。
「一度ならまだしも、なぜ三回も立て続けにそんな愚行をしたんですか?」
「いい大人が恥ずかしいって思わないんですか?」
「それでも国を代表する政治家ですか?」
責め立てられた山村大臣はへへと後頭部をかいた。
「一生に一度の思い出を、こんな形で穢された選手の気持ち、あなたは考えたことがあるんですか? 金メダルですよ!」
「……あまりにも綺麗だからつい……光ものには特に反応してしまったんです」
「話にならない」
子供のような言い訳に質問した記者たちのため息。SNSで批判のコメントが相次いだから仕方なく謝罪会見を行ったとも付け足す大臣。
カメラのフラッシュと共に、大臣の額にも脂汗が流れる。
「じゃ、あの高級果物についてはなぜですか? 一度痛い思いをしたはずなのに、あなたは学習能力がないんですか?」
金メダルにかぶりついたあと、山村大臣は地元の名産品に思わずかぶりついたのである。
「美味しそうだったからです。お腹が空いて仕方なかったんです」
だとしても、いい大人が食欲に負けていきなり口に入れるだろうか?
記者たちは呆れていた。
「では、今回の件についてですが、大臣、あなた、もう犯罪レベルですよ。あなた、公共の場で女性にしがみつき……その……胸に……」
糾弾したいであろう記者たちも、大臣の愚行に怒りを伴って言葉が震える。
そのまま警察に通報された破廉恥極まりない行為だった。
「僕、僕はずっとミルク育ちだったんだ。母乳に憧れてついあんなことをしたバブよ。ママのおっぱいが好きだバブ」
バブって何だよ? 赤ちゃん言葉で泣き出す山村大臣に騒然とする記者たち。
言い訳する山村大臣の正体は赤ちゃんだった。
完
KAC20237 何でも口に入れたがるお年頃 星都ハナス @hanasu-hosito
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