コアラのマーチ

 コアラのマーチ。

 ロッテから販売されているお菓子。

 少し前、コアラがプリントされた部分に、名前が入ったものが販売されていた。


 ゆうき、れい、るい、のように名前が入ったコアラのマーチ。

 子供たちは自分の名前や、友達を探すわけで。

 なかなか、自分の名前を引き当てることもないけども。それでも、探すことが楽しいという……感じらしい。


 そんなこんなで。

 子供たちと買い物中。

 久々に売っているのを発見。


「……じいちゃんの名前あるかな?」


「亡くなったじいちゃんの名前が出そう」


 そう。少し前に私の父親が亡くなった。

 子供たちから見たらおじいちゃん。亡くなってからも、なんとなく側にいる気がしている。この時はなぜか、おじいちゃんの話題で盛り上がった。


「でもおじいちゃんの名前は、古風な感じだから、今時のコアラのマーチに入ってないと思うよ?」


 入っていたら面白いけどね。


 二人が欲しがるので、二個だけ購入。


 帰宅してすぐに、コアラのマーチを食べる子供たち。私は夕飯の準備をする。


「ギャアァ!」


 二階から響く叫び声。

 階段から息子が、落ちる勢いで降りてきた。


「これ、見て!」


 差し出された一粒のコアラのマーチ。私は目を疑った。


「ひでお」


 そう。なんと、私の父親の名前があったのだ。


 店に並んだコアラのマーチの中から、選んだのはたった二個。なのに、出たのである。


 そうか、お父さん。

 私達を見守っているのだね。


 少しだけ胸が温かくなった気がした。


 ──しかし。


「マジかよ。怖ぇぇ!」


『ひでお』を引き当てた息子はその夜、怖くて眠れず、金縛りで一晩うなされていたようだ。


 ……嘘みたいな本当の話。


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怖い話に魅せられて⭐️ 一清 @ichikiyo

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