危険なアンラッキーナンバー

ののあ@各書店で書籍発売中

7に近づいてはダメ


『本日のアンラッキーは~~~~《7》です!!』


「なんだそりゃあ?」


 たまたまテレビで流れていた朝番組から聞こえてきたのは、ラッキーナンバーではなく、アンラッキーナンバーだった。余裕を持って出発する準備を整えながらついテレビ画面に目を向けてしまう。


『いいですかー? とにかく《7》です、《7》に気をつけてください。気にしないでいるとどんな不幸が訪れるかわかりませんよ~?》


 とても不安を煽ってくる番組に対して「いやいやいや」とツッコミを入れつつも、「行ってらっしゃい雅人~」と母親に見送られながら制服姿で出発する。あまり気にし過ぎはよくない、そもそもただのテレビ番組の占い(?)コーナーなのだから。


「何より、オレにはそんなものを気にしてる様子はねえ!!」


 今日のオレには大事な使命がある。

 先月チョコをくれた同級生の天宮あまみやに、この手に持ったホワイトデーのお返しを渡すと言う使命が!


 チャンスは天宮が学校に着く前まで。

 それ以降だとクラスは違うわ、野郎共が群がって来るわで色々ときびしいのだ。


 そんなわけで、いきなりオレは通学路を走り出した。

 天宮により早く出会って、このクッキーを手渡すために!


 ◇◇◇


 だが、今日に限って変なイベントが連続して起きた。

 いつもどおり住宅街を抜けていこうとした矢先、


「そ、そこの子、あぶなーーーーい!!」

「ぬおおおおお!?」


 角を曲がったらセントバナードばりにでかい大型犬が7匹。オレに向かってドーン! と体当たりしてきたのである。


「す、すいません、すいません! こら、お兄ちゃんが困ってるでしょ!」

「だ……大丈夫ですよ。でっかくて可愛いわんちゃんですね」


 ちょっとダメージを負ったが大したことはない。オレは7匹のリードを掴んで飼い主であるマダムに手渡した。ぺこぺこ謝りながら去っていくマダムを見送っていると、ふと七匹の犬と今朝のアンラッキー7が繋がる。


「……まさかな」


 半信半疑のまま、オレは先を急いだ。

 そしたら今度は、


「ふしゃああああああ!!」

「ぐああああ?!」


 七匹の猫に襲われた。

 やつらはオレを目の敵のように攻撃してきたのである。


「はぁ、はぁ……いてて、爪痕が……」


 適当にネコたちを追っ払ったオレは少々のダメージを負ったが、なんとかなった。

 ここでいよいよ、アンラッキー7が頭から離れなくなる。


「もしかしなくても、あのエセ番組……マジもんなのか」


 だとすれば、だ。

 とにかくアンラッキー7に近寄るのは危険だ。既に二回も不幸が訪れているのだから。ここは慎重に7が関係しそうなものは避けるべきだろう。


「よし、そうと決まれば話は早い! 前進だ!!」


 今度は道の向こうから7人で登校する子供達が見えた。

 事前に察知したオレは迂回して進む。


 ガシャーーーン!!


 オレのすぐ傍に、花瓶らしき物が落ちてきて粉々になった。


「あ、あぶねえ……って、おい!?」


 誰だ花瓶を落としたのはと思い上を向くと、次から次へと何かがオレめがけて降ってくるのが見えた。やはり花瓶だった。


「だ!? とっ! ほっ! ぬわ?! どわあ!!?」


 ギリギリですべてを回避したオレはまぬけなステップを踏むピエロのようだったかもしれない。恐るべしアンラッキー7。もはや何者かがオレの邪魔をしているかのようだ。


「お、おかしい……。オレは確かに7を回避したはずなのに」


 ちなみに落ちてきた花瓶は7つではない。

 ならばさっきの子供達を回避したのだから不幸にならなくてもよくないか???


 などと愚痴りたくなった際、ふと看板が目にはいる。

 そこにはハッキリと『ココ、七番地』と書かれていた。


「なるほど! ――って、んなわけあるかあ!! どんな仕掛けじゃあ!!」


 ぎゃあぎゃあ怒りをまき散らしながらも、オレはアンラッキー7から逃れるために急いで七番地から離れた。少しでも天宮に会うために、その一心で!!



 以降も、行く先々で7にまつわる不幸が訪れた。

 オレは必死に回避しようとしたが、それも上手くいかない。だがズタボロになりながらも、オレは決して諦めなかった。


 ボールにぶつかろうが自転車にはねられようがカラスのんこ爆撃をくらおうがマンホールに落ちようが突き進んだのだ!!

 そうして遂に……。


「はぁ、はぁ……い、いた。天宮-------!!」


 学校に到着する直前。

 登校しているオレの女神に向かって大声で叫んだ。


「え?」


 オレの声に反応して天宮が振り返る。

 よし、これでミッションコンプリートだ!!


 ――と、思っていたら。


「おっはよーーーー!」

「ぐほお!?」


 後ろから勢いよく走ってきた女子にはねとばされ、オレは宙を舞っていた。

 ヘロヘロなオレは普段なら大丈夫な衝撃にすら耐えられず、ぶざまに道路へと激突したまま倒れ伏してしまう。


「……ば、ばかな。もうどこにも7に関連するものはなかったはずだ」


 息も絶え絶えでそう呟くオレの耳に、天宮とオレをはねとばした女子の会話が聞こえてきた。


「天宮七美は今日も美人だね~、眼福眼福♪」

「もう、からかわないでよ~」


 きゃっきゃっうふふしてる天宮達のおかげで、わかった。

 そうか、天宮の名前は《七》美だったっけ。


 完全に理解した。

 オレはみずからアンラッキー7に近づこうとしていたのだ、と。

 





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