不幸の連鎖

束白心吏

不幸の連鎖

 人生山あり谷ありと云うことがあるが、時には谷にバンジージャンプでもしたのかくらいに不幸になることがある。その逆もまた然りだ。


「はぁ……」


 昼休みの教室で、一人ジャージを着ている俺は教科書類の他に何も入っていない鞄の中を見て溜息を漏らす。

 今日はとことんついてない。弁当を忘れたこともだが、朝から寝坊――なんと目覚ましが壊れていた――し、急いで家から出れば雨が降ってたので電車を使おうとしてみれば人身事故で遅延。どうにか遅刻は免れたものの制服はびしょ濡れの為ジャージを着ることになり、筆記用具を忘れ、しまいにゃスマホを忘れる始末。偶然が上手いように重なったと言われればそれまでだが、こうまで不幸なことが重なると誰かが作為的にやってるのでは? と邪推の一つでも浮かんでしまう。


「おー、溜息とは珍しいですなぁ六田尾むたびさんや」

「そりゃ朝から不幸続きですからねぇ土見つちみさん」


 俺は授業終了直後に教室を飛び出し、秒で購買から帰って来て前の席を陣取り焼きそばパンを食っている友人に今朝からの不幸を話すことにした。するとコイツは感心した様子を見せる。


「すげぇじゃん。誰かに呪われてんじゃねぇの」

「滅多なこと言うなよ……てか呪われるようなことした覚えがないわ」

「だよなぁ。六田尾氏、基本恨まれるような性格してる訳じゃないし」


 食べ終えた焼きそばパンの袋を丸め、器用に若干遠くにあるごみ箱に投げ入れながら土見は続ける。


「あー、でもだからこそってのもあるかもな?」

「おいやめてくれよ……つーかそれ、もうどうしようもねぇじゃん」

「よし、もうそういう運命なんだと受け入れろ青年」

「まるで人を不幸体質みたいに言うな。今日だけだわ」

「だといいなー」

「おい不吉なのホント今はやめろ」


 まあ、深く考えても仕方ないだろう。そういう日もある、そう考えた方が俺の精神衛生的にはいいしそういうことにしようと思う。はい終わり。

 それに考え事をしていたら喉が渇いて来た。お昼の調達も兼ねて購買行くか。


「ちょい購買行ってくるわ……あ」

「行ってら――どしたん?」


 土見にことわりを入れながら俺は鞄を漁る。

 しかしいくら探せども、俺の愛用してる小銭入れのような財布は見当たらない……つまり。


「財布も忘れた……」

「六田尾氏、今日はとことんついてないなぁ」


 本当に呪われてんじゃね? と言いながら土見はケラケラと笑った。

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不幸の連鎖 束白心吏 @ShiYu050766

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