Change Blossom Sixth

朱ねこ

七つのアンラッキーポイント

 夜闇の中で私と対峙するのは筋肉マッチョで巨体な犬のぬいぐるみ二匹だ。私の右肩に乗る光の使者曰く、闇に支配された国王様と王女様らしい。


「国王様たちを闇の力から解放するポメ!」

「チェリーパワーで殴ればいいのね?」

「単に殴るだけではだめポメ」


 同じく犬のぬいぐるみが目を閉じ首を横に振った。右耳に多量の毛が触れくすぐったい。


「じゃあ、どうすればいいのよ?」

「言い伝えによるとだポメ」

「前置きはいいから早く本題に入って!」

「人間はせっかちポメ」


 王国を助けて欲しいと懇願したくせに承諾したらこの態度だ。


 せっかちという問題ではなく、国王様たちが待ってくれないのだから仕方ないだろうに。

 筋肉ムキムキな腕が私たちに振るわれ私は後方に飛躍する。


一星イーシンから七星チーシンのアンラッキーポイントを叩くんだポメ!」

「アンラッキーポイント? ていうか、なんで中国語?」

「昔からそう決まってるポメ! 余計なことは気にせず、両肩、両膝、お腹、胸、顔を叩くポメ!」


 七星チーシンということは計十四箇所狙わなければならないことになる。


「多くない!?」

「一難去ってまた一難ということポメ!」

「あなたがそれをいうの!?」


 ドヤ顔をかます犬のぬいぐるみに呆れてしまう。


「やるしかないポメ!」


 再度同様のツッコミをする気にはならなかった。


 チェリー王国を助けるため、国王様と王女様を闇から救うため、そして何より私が元の世界に帰るために戦うしかない。

 覚悟を決めろ、私。


「やるよ!!」


 崩れた建物に降り立ち地面を蹴る。目前には筋肉マッチョな犬のぬいぐるみ。

 王冠を被っているからこっちは国王様だろう。


 チェリーパワーを込めておいた拳を右肩に打ち込み、残りの六ヶ所を連続で叩く。


「やれるじゃん、私!」


 人ならざるブロッサムの力に思わず感嘆してしまう。

 背後に気配を感じてしゃがみ込むと頭上には翻ったスカートと足がある。

 

 ぬいぐるみの足を払い、瞬時に七回拳を食らわせた。


「やっぱりやれるじゃん、私!!」


 歓喜した私の足元では、二匹の小さな犬のぬいぐるみが小首を傾げていた。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Change Blossom Sixth 朱ねこ @akairo200003

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説