七福神
ナツメ
七福神
店にほど近い福禄寿から、布袋尊、弁財天、大黒天に参って、甘味処で一休みをしている。白玉を口に運びながら、憂子はふと幼い頃のことを思い出した。
妹の
昔から憂子は月子に甘い。五つばかり下の妹は気弱な自分と違い天真爛漫で、眩しかった。婚約者を亡くした時はひどく憔悴したが、近頃はもう殆ど以前のように
底に溜まった蜜の最後の一
七福神巡りは今年で七回目だが、その実一度も完遂できたことがない。毘沙門天、寿老人までは参拝し、最後に恵比寿神社に向かうのだが何故だか毎年辿り着かない。理由はほんの些細なことだ。日射病で倒れかけたり、電柱の工事で道が塞がれていたり。
今年こそお参りできるかしら、と思いながら憂子は歩を進める。カラ、カラと下駄の音が湿った空気を揺らしている。
やっと鳥居が見えたとき、
「お
と声がした。
憂子は振り返る。
「ご無沙汰しています」
背の高い男が白い菊の花束を抱えている。
「お参りですか。私も毎年来ていたのですが、お会いしませんでしたね」
でも今日会えて良かった。そう言う男の白い顔を見て、憂子は、幽霊だ――と思った。
「今年は月子さんの七回忌ですから」
男は、月子の死んだ婚約者の顔をしている。
七福神 ナツメ @frogfrogfrosch
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