死神の君を信じるなんて。
蘇 陶華
第1話 アンラッキー7からの招待状
地味な仕事。僕には、ピッタリで、あの幼い日から全てが変わった僕は、人の目から逃れて生活していた。今時流行らないメガネとボサボサの頭。自身なさげに話す僕は、ケアマネの仕事して、あちこちの家を訪問していた。
「何か、変なんだよ」
僕の幼馴染の八が、声を上げた。八も、僕と似たような仕事をしていて、あちこちの家にベッドや車椅子、いわゆる福祉用具の搬入を行っている。
「七街町の会長さんが、食べすぎて亡くなったって。元々、糖尿病はあったらしいけど、吐くほど、食べるか?」
「ふーん。そうなんだ。」
僕は、次に訪問するお宅の事で、頭がいっぱいだった。八とは、同行の予定だったので、僕の運転する車にちゃっかり乗っている。
「でさ、まだある。そのお隣なんだけど、両親が認知症なんだけど、面倒見ていた長女が、介護放棄とやらで、両親を餓死させたんだと」
「ふーん。そんな事、よくある話じゃないか?」
僕は、目的地に着いたので、車を、止めやすい空き地に止めると、後部シートから、バックを取り出し肩に掛けた。
「だけどな。共通点があるんだ」
八は、僕の鼻先に指を突き出し、その指は、僕の目線に合わせて、これから訪問するお宅の表札へと、向かっていった。
「ナナなんだよ」
「7?」
指先が、指す表札の中には、電話番号があった。XXX−7777と。
「嘘だろう?」
僕は、笑った。
「アニメじゃあるまいし」
「だけど、相談があったのは、この家だし。内容が・・」
八が言うことをわかりやすくすると、7つの大罪がある。暴食。怠惰・色欲・嫉妬・強欲・傲慢・憤怒と。それらに関わる不審な死、または、その寸前の相談が続いているという、しかも、住所や電話番号、いずれかに必ず、“7”の数字が絡んでいる。これから、訪問するお宅は、奇妙な家族関係の家で、本妻と内縁の妻が、1人の男性と同居していたが、男性が、瀕死の状態で、発見され、通報された。瀕死の状態だったが、今日、無事に退院し、自宅に戻ってくると言うのだ。
「偶然だろう!」
僕は、笑った。あの日以上の不思議で、恐怖の日は、二度と来ない。僕は、八の肩を軽く叩いて、玄関に入ろうとした。玄関は、開いていて、靴が、何足か乱雑に脱ぎ捨てられていた。
「あれ?もう来ていたんですか?」
僕は、奥から聞こえた小さな悲鳴が聞こえたのに、まさかと思いながら、部屋の奥を覗き込んで、ハッとした。
「え?」
奥と目が合った女性は、目が一つしかなかった。見間違いか?僕は、一瞬、八と顔を見合わせて、もう一度、正面を見ると
「ここにいたのか!」
恐ろしい形相で、その一つ目の化け物は、一瞬にして、僕と八の前に、立ちはだかった。
「八!逃げろ!」
僕は、バックを縦に、八を庇った瞬間。白い光が、化け物との間に走った。
「何?」
バックを避け、僕が、振り返ると、そこには、あの一つ目の化け物は、おらず、薄い桜色のナース服を着た若い女性が立っていた。
「君は?」
僕の問いに、関わらず、彼女は、白い鞭の様な物を振り上げ、化物の首の付け根に振り下ろすと、こちらを見て、軽く笑った。
「誰?」
優しく笑う姿は、看護師に見えただろう。だけど、僕は、背筋が、寒くなるのを感じた。
・・・彼女は、僕と同じ匂いがする・・・
一つ目の化け物は、跡形もなく消え、女性は、何もなかったかの様に、掌に、鞭を納めると、
「中へ、どうぞ。皆さん、お待ちです」
彼女は、部屋の奥へと、僕達を案内した。僕は、呆然とする八の背を押しながら、後からついてくる彼女の顔を見た。
「これから、7にまつわるケースが続いてくる。あなたの腕を見せてもらうわ。迦瑠羅」
僕は、ギョッとして彼女の顔を見上げた。見つめる彼女の顔は、浮かべている笑顔とは、別で、冷たく、感情のない顔だった。彼女が、死神なんて、その時、僕は知る余地もなかった。
〜死神の守人〜本編に続きます。
死神の君を信じるなんて。 蘇 陶華 @sotouka
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