ダンサー
ここのえ九護
●
「7は幸せの数字なんだって!」
今もふと思い出す。
私の前で無邪気に語るあの子の笑顔を。
決して悪い子ではなかった。
明るく、勉強も出来て、運動神経もそこそこ。
グループの中心人物にはならないが、決して外れにいるわけでもない。
友人が困っていれば『大丈夫?』と声をかけ、できる限り相談にのる優しさもあった。
少々夢見がちでミーハーな部分はあったものの、私とその子が親密だった学生の時分を考えれば、それは誰しも似たようなものだっただろう。
7は幸せの数字。
ある時。とある有名な占い師に直接そう言われたらしいその子は、その日を境に7とつく物を買い漁るようになった。
グッズや縁起物を集めていた頃はまだ良かった。
いつしかその子は、グループで集まった際のテーブルや電車の車両の番号にまで7を持ち出すようになる。
いや、今思えばまだその頃はマシだったのだ。
私も含む友人たちは、その子のラッキーセブンへの傾倒を煙たがりつつも、まだ付き合っていた。しかし――
「やっぱり7はだめ! 7は不幸の数字なんだって!」
同じ占い師に、7は不幸の数字に反転したと言われたその子は、今度は別人のように7という数字を忌み嫌い、避け始めたのだ。
三桁万円にも達するバイト代を注ぎ込んだグッズは全て捨て、日常生活でも、学校生活でも7という数字を徹底的に避けるようになった。
あきれ果てた友人たちは、その子をグループから外した。
私もその子と会う機会はなくなった。
ちなみに、私の名前にも〝七〟という一字が含まれている。
当時、私がどのような態度を受けたかは思い出したくもない。
あの子にとって、きっと私はラッキーセブンにも、アンラッキーセブンにも見えていたのだろう。
もうあれから何年もたつ。
けれど、あの子はきっと今も踊っているはずだ。
どこかぼやけた、
世間と他人に吊された糸に縋る、人気のダンサーとして。
ダンサー ここのえ九護 @Lueur
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