アンラッキーNo.7

ハマハマ

君は知っているか

 君は知っているか。

 我々にとって『7』が不吉な数字であることを。


 『6』は良いが『7』は良くない。

 もちろんにとって、だ。



 殿下のお供としてこの世界にやってきた私には、共にやってきた吸血鬼やフランケンシュタインとは大きく異なる事がある。


 それは、私のベースは人間と変わらないという点だ。

 ただし、満月、またはそれに類するような真ん丸のものを視界に収めてしまうと二足歩行の狼へと変身してしまう点を除けば、だが。


 普段は冴えない小太りの中年男、しかし化けた私の姿は美しいと自負している。


 フランケンシュタインにさえ負けない強靭な体、吸血鬼にさえ劣らぬ整ったスタイル。さらには鋭い牙と爪。

 気品ある美しき殿下でさえも褒めて下さる漆黒の毛並み。


 ――しかし私は……私のあの姿が――大っ嫌いだ。


 何故か、だと?


 決まっているだろう。

 私が精魂込めて作った料理に入るんだよ!

 毛が!

 あの忌まわしい真っ黒で硬い剛毛が!

 

 これでも私は魔界では有名な料理人。そんな私の料理に極太の毛が混ざるなど許されんのだ!


 だから私は細心の注意を払って料理をする。

 例えばレモンを輪切りにする際はやや斜めに包丁を入れて楕円に切る。

 その様に気をつけてさえいれば、ほんの少しの変身――せいぜい狼の耳が頭頂部に生える程度で済む。


 ただ、私は味も見た目も最高の料理を提供する事こそ至高だと考えるが、私が好む食事はそうではない。


 そう、それこそ真逆な――血が滴る様な肉がいい。

 けれど……



「殿下! これをご覧下さい!」


「なんだ狼男。まさかまた見つけたのか?」


「今度はこにございます! なぜは狼に優しくないのです!?」


 『7』に加え、新たに『3』も不吉な数字となったのだ。



 子ヤギの数が7でなく6であれば……

 子豚の数が3でなく2であれば……


 君は知っているか?

 狼にとって『7』と『3』は不吉なアンラッキーナンバーだという事を。

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