表裏一体のラッキーとアンラッキー

リフレイト

騎士の夫と別れようと思います

 子爵家の6男の夫とは、ずっと幼馴染として一緒に育った。順調に関係を深め、彼が師団長になった時に結婚。

 騎士の仕事は治安を守るくらいで、彼は高貴な方の護衛をしており高給取り。

 どこかの小説みたいに、王室の暗殺などといったおどろおどろしいアレコレもなく、そこそこ優雅で夢に描いたような幸せな日常を送っていた。


 夫は出世するにつれて、家に帰って来なくなった。今では週に一度帰ってくればいいほう。


 結婚してから7回目になる結婚記念日は、ホワイトデーでもある。

 先月のバレンタインデーに、お祝いをすっぽかされ一夜を過ごしたのは記憶に新しい。でも今日は必ず帰って来ると約束していた。なのに、彼が帰って来たのは日付が変わる直前。帰って来る気はなかったのかもしれない。

 

 酔っ払い特有の強い酒の臭いで鼻が曲がりそう。しかも、鼻につく甘ったるい香水とボディーソープの香りを纏わせている彼は、自分のその香りに気付いていない。私に甘えてもたれかかるように抱き着いて来た。不倫している事がバレているなんて思ってもいないのだろう。


 7か月前から、怪しいとは思っていた。


 私は、彼の仕事が出世をした事で多忙になり、家に帰って来る事ができないのだとばかり思い、寂しさと悲しみを抱えながらも信じていた。

 でも、7日前、彼が豊満な体つきの妖艶な美女と抱き合い、深くキスをする場面を見たのである。


 その姿を偶然見た事は、ラッキーだったのか、アンラッキーだったのか。その日から、私は家を出て行く準備をしていた。


「ただいま~愛してるよ~」

「お帰りなさい、セブン。そして、さようなら」


 私は状況がさっぱりわからず呆然としている彼を、家に置き去りにしたまま家を出て行った。


 私に出て行かれた彼は降格して恋人にもフラれたらしい。


 私はというと、不安もあったけれど、仕事もラッキーな事にすぐに決まり幸せいっぱいの毎日を送っている。










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