幸運の女神、風邪を引く

背番号7番の少年にロック・オン！

　へくちっ

　私、幸運の女神。

　色んな人に、気ままに幸運を授けるのが趣味なの。

　もらって嬉しいもの、四つ葉のクローバー。

　好きな数字は７。

　好きな言葉は「ツイてる！」

　さて、今日のラッキーな人は誰かなぁ……

　決めた！　あの子にしよう。

　今まさに打席に立ってバットを構えている男の子。

　真剣な表情。

　ベンチに座っている女の子にいいところを見せたいなんて、かわいいじゃない。

　それに、背番号7番というのがいいわ。私の好きな数字よ。

　ツーストライクスリーボール。緊張の瞬間ね。

　よーし、行くわよ……

　へくしっ

　……あれ、どうしたのかしら？

　うそ、デッドボール！？

　痛くて転げまわってる……ああ、担架で運ばれちゃったわ。

　なんでぇ！？　この私がついていながら、こんな惨事になるなんて。

　くしゅんっ

　え、風邪引いてるんじゃないかって？　やだな、女神が風邪引くわけないでしょ。

　待ってなさい少年。その怪我、福に転じてあげるわ。

　医務室で気になる女の子に付き添われて、痛いけど強がってるわね。いじらしい。

　行くわよ……

　ハックショィ！

　うーん、なんか頭痛いなあ。

　あれぇ！？　どうして平手打ちされてるの！？

　そ、そっか……このタイミングで告白しちゃったか。

　びっくりして思わず手が出てしまったのね。

　お互い好きなのに、もどかしいカップルだわ。

　もっと素直になりなさい。い、行くわよ……

　ハークション！　クシュィ！

　いやん、女の子が号泣してる。少年は怪我の痛みに耐えながらおろおろしちゃって……

　あれ、なんか世界がぐるぐる回ってるわ。ぐるぐるぅ～

　ふう、ごめんあそばせ。やっぱりタチの悪い風邪だったみたい。

　一晩寝たらすっかりよくなったわ。

　あの子たちがどうなったか、知りたい？

　私の手助けなんかなくても、あの後ちゃんとお互いの気持ちがわかって付き合うことになったわよ。めでたしめでたしね。

　もしも私を呼びたければ、７で引き寄せてね。

　必ずラッキーにしてあげる！