第13話 溶け合うモノタチ

これより決闘計画(プラン・デュエル)による評価試験3日目。XC-γB10『セレスト』VS XA-γB08『ユグドラシル』を開始します。


(始まった…………)


睨み合う両機。肌に突き刺さる風が戦場に轟く。


「どうしたタリサ?」


ダニエルの影に必死に身を隠そうと試みるタリサ。視線の先には2人がいた


(ローグ中尉とフルム中尉…………)


「どうした?ダニエル少尉」


「マリナ大尉…………」


「………我々が話しかけた所で気休めにはならない。むしろ火に油を注ぐことになる。あまり気にするな」


「そうですよね………」


「貴官もだ。タリサ少尉」


「ハッ、ハイ!?」


「ところで、君はどう見てるんだ?」


「ソルト中尉、どうとは?」


「唯一。『チャイア』の『γ-ブレイク』と接触している君達はこの戦いをどう見てるんだい?」


「どう?と言われましても、接近しただけで情報は得れてませんので」


「あっ、そうなの?」


「はい」


「じゃあ『ANU(アヌ)』のはどう?」


「ここまで見た機体には無い特徴をしていると思います。火力特化型ですよね?」


「そうであろうな。重厚な見た目に反してある程度の機動力は恐らく確保している。火力は他の追随を許さないだろう」


「圧倒的火力による制圧があちらの戦術方針って感じか」


「そうだろうな」


「にしても『チャイア』の機体………意外とシンプルだな」


「はい。背面に背負う鎌状の武器と大口径の射撃武器だけのようですね」


「あの両肩のパーツは武器なのか?」


「見た所、飾りだな」


先に動いたのは『ユグドラシル』。背面から頭部の横に伸ばした高火力のエネルギー砲を挨拶がてら放つ。


『セレスト』は微動だにしない。


「弾いた!?バリアが形成されているのか?」



大尉。あの機体の周辺からエネルギーは感知出来ません。


「どういうことだ?特殊な装甲か?」


両腰にマウントしたレールガンを放つも、またしても弾かれた。


「ビーム系統がダメなら」


両腕、両足、両脇のから24発のミサイルが『セレスト』目がけ乱れ舞う。


全てのミサイルが『セレスト』に直撃した。


「実弾はバリアでは対処出来ないか!」



大尉。ですがあの機体ダメージは受けていないようです。



「両肩のパーツで防いだか………盾としての強度を持ち合わせているようだな。中尉、まずはあの両肩のパーツを破壊するぞ!その後ミサイルを中心とした飽和攻撃だ」



了解



「…………どうだ少尉?」




問題ありません。やれます。




「よし、では少尉誘ってやれ」



了解




「以外と防戦一方な展開だな『チャイア』の機体」


「なかなか強固なバリアを展開出来るようだが、弱点も早々にわかってしまったな」


「…………呼んでる」


「タリサ?」


突然蹲るタリサ。


「タリサ!?どうした?」


「ダメ!違う!!そんなのダメ!!!」


「タリサ!どうしたタリサ!!」


ガタン


「ソルト!?」


急に倒れるソルト。


「グッアッ…………なんだこれ?」


「おい、どうした?」


あまりの出来事に少し距離を取って見ていた2人も様子を伺う。


「なに、なんなのよ!?」


「わからん。突然2人が苦しみだしたんだ」


「…………おい向こうも様子がおかしい」


ローグの一声で自分達が任務の途中であることを思い出した一同。


目を向けると直立不動の『セレスト』に対して跪く『ユグドラシル』。


「なにが、どうなっているんだ?」



「なんだ!急激に出力が低下していく!?」



『ユグドラシル』のエネルギーがあの機体に吸収されてます。



「なんだと!?」


(メガカノンとレールガンの出力が無いのはまだしもミサイルや携行武器を使おうにも機体を動かすだけのエネルギーすら残ってないだと!?)


「パトラ中尉。腕に動力を集中だ。あの機体に攻撃を当てれさえすればこの状態も解けるはずだ」



………………


「パトラ中尉?どうした?パトラ!」


(バイタルが急激に低下だと!?なにが起きているんだ!?)


「パトラ!しっかりしろ!!パトラ!!!」




さぁひとつになろう



(女の声?)


「!?クソ!!」


ゆっくりと近づく『セレスト』。アヌールに最早為す術はない。


「ここまでか………」



アヌールを殺させはしない



振り下げられた鎌は『ユグドラシル』の首元で止まった。


「なんの………つもりだ?」



γB08『ユグドラシル』の動力完全停止及びXC-γB10『セレスト』側からの申請により試験終了。勝者XC-γB10『セレスト』。


「終わった………だと?」


告げられた結果に顔をしかめるアヌール。試験が終わっても『ユグドラシル』は動かない。


「評価試験は終わったんだぞ!?何故動かない『ユグドラシル』!………まさか!?」


最悪の事態がアヌールの頭をよぎる。


「パトラ!返事をしろ!!パトラ!!!」


急ぎカプセルを開けるアヌール。


「嘘だろ…………パトラ〜〜〜!!!」


泣き叫ぶアヌール。瞳孔の見開いた最愛の人がじっと彼を見つめていた。





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レインボーロード ザイン @zain555

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