第7話 他の注意事項

 カクヨムコン……詩織さんに教えてもらった通りだとすると、文章を書くこと以外にやること多いよな。でも、多分中間選考を通る人たちって皆こういうことやってるってるんだよね。自分としてはもっと安易に考えていたから、ちょっと反省。


「今はまだ三月ですけど、他にやっておくべきことってないですかね」

「そうさな。カクヨムの筆記ルールは確認しておくとよいぞ。例えば句読点の使い方、セリフの際の括弧の使い方、改行の入れ方などじゃな」

「えー、小説って普通に句読点とか入れたらダメなんですか?」

「まあ推敲の部類に入るが、文章があまり長くなりすぎると読みにくいじゃろ? 逆に句読点だらけだとこれも読みにくい。あと、最近の投稿サイトはどれも横書きが主流じゃからな。適度な文章の長さで改行して空行を挟まんと、これも読みにくい」

「なるほど」


 確かに、小説投稿サイトで作品を読んでいると、結構空白行が入ってるもんな。詩織さんによれば、カクヨムの中に作品として『web小説の書き方』みたいな作品が結構あるからググれば良いとのこと。ああ、詩織さんが『ググる』とか言い出した……もうすっかりネット民ですね、神様なのに。


「あと文章の『視点』も確認しておくと良いぞ。要は登場人物の視点で文章を書くのか、それ以外の第三者の視点で書くのかじゃな」

「ネット小説は登場人物の視点で書いてあるのが多い印象ですね」

「その方が読者も感情移入し易いからじゃろうな。それに、漫画などは基本的に主人公の視点じゃろ? そちらの影響かも知れん」

「詩織さん、文芸の神様なのに漫画も読むんですか?」

「何を言っておる。漫画も立派な文芸じゃぞ。漫画が読みたいから外界に来ている神も多いからな」

「神様たち、意外とミーハーですよね……」

「ハハハ、暇じゃからな。刺激に飢えておるんじゃ」


 詩織さんと暮らし始めて、神様の印象が凄く変わった。皆が皆そうではないと思うけど、本当に人間臭いところが多いんだよね。詩織さんは続けて、誤字脱字を減らすとか文章全体で体裁を整えるとか……推敲の方法も教えてくれる。


「推敲のためのWEBページがあるし、パソコン用のツールもあるな。探してみるとよいぞ。重要なのは自分のルールを決めて、物語の全体を通してそれを適用することじゃ」


 カクヨムコンの長編は十万字以上ととても文字数が多いので物語の話数も増えるけど、全話にわたって同じルールが適用されている方がいいとのこと。例えば『暫く』と漢字で書くか『しばらく』と平仮名で書くか、などなど……確かにパソコンで文章打っていると、ついつい変換したりしなかったりしちゃうもんね。


「とにかく時間はかなりあるので、早いところ一作目を書いてカクヨムのシステムに慣れることじゃな。いきなり十二月に本番を迎えるよりも、随分心の余裕もあるじゃろうて。ああ、それと私は十月は留守にするからな。私がおらんでもしっかりやれ」

「どこか行かれるんですか?」

「十月と言えば神在月じゃからな。神々は出雲に集合じゃ」


 ああ、出雲以外では神無月、つまり十月ですね。詩織さんの話によると、その月は下界に来ている神様も出雲に出向いて色々報告したり情報交換したり宴会したりするらしい。宴会……


「あれ? でも実際は旧暦じゃないんですか?」

「旧暦で動くと色々生活しにくいからの。最近では神々も新暦で動くのじゃ。それに祭りは十二月からじゃろ? 旧暦の神在月で動くと祭りに間に合わんではないか!」

「いや、ネット上の祭りなんだから、出雲からでも参加できると思うんですが……」

「気持ちの問題じゃな。それに、カクヨムコンに参加しておる神もおると言ったじゃろう? 直前の一ヶ月は結構痛いのじゃ」


 神様方の祭りにかける情熱がヤバいと感じつつ、出雲に集まっている神々の様子を想像しているとちょっとおかしくなってきた。何かしらの締切に追われている神様もいるのだろうか。


 昼食の時間になったので、外に食べに行くことに。詩織さんのリクエストにより、お昼は牛丼に決定! 近場にある店に行くだけだから、詩織さんはジャージ姿のままだ。特盛牛丼をぺろりと平らげてご満悦の詩織さん。


「夕飯は鍋が良いのお」

「鍋ですか? そうですね、夜はまだちょっと寒いし鍋でもいいかもなあ。じゃあ、帰りに材料を買って帰りましょう」

「おーっ!」


 今食べたばっかりなのに、もう夜ご飯のことを考えているとは……詩織さんは食いしん坊な神様なのかも知れない。スーパーに行って、まずは鍋スープのチョイスだ。最近はスープ自体がパックされて、しかも種類が沢山あるのを見て目をまん丸にして驚いていた詩織さん。ちょっとカワイイ。


「な、なんじゃこの種類の多さは!? 昔は水炊きとかすき焼きとか、それぐらいしかなかったぞ!?」

「最近は色んな鍋スープがこうやって売ってるんですよ。材料を切ってスープに入れて煮るだけだから、楽ちんなんですよねー」

「全部食べてみたいが……味の想像がまったくできん。カレーやトマトも鍋になっておるのか!?」

「カレー鍋もトマト鍋も美味しいですよ! トマト鍋は締めにパスタを入れたり……」

「ハイカラじゃのう! いや、しかし、キムチ鍋と言うのも気になるのう。キムチとはあの辛い漬物のキムチか!?」

「そうですね。キムチ鍋はちょっとピリ辛で、締めはやっぱり中華麺ですかねー」

「ゴクリ……よし、キムチ鍋にするのじゃ!」

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