第5話 ペース配分

 詩織さんのレクチャーは続く。


「ところで、執筆と投稿ですが、執筆しながら投稿してはダメなんですか?」

「別に構わんが、それだと推敲に追われることになるじゃろ? 特に二作目の本番は、毎日投稿することが重要なのじゃ。だから私の考えたスケジュールでは、祭りが始まるまでに全て書き終わっている必要があるのじゃ」


 詩織さんの計算では一日二千文字として、これを週五日、つまり一週間で一万文字としているらしい。一ヶ月を四週として月に四万文字、三ヶ月で十二万文字となる計算だ。カクヨムコンの規定文字数は十万文字以上だから、少し余裕があるのかな。


「お主の様に仕事しておる者は、仕事を終えた夜か土日に書くことになるじゃろ。慣れた者なら一日一万文字は書けるらしいが、それから考えるとかなりゆっくりしたペースじゃ。しかし推敲したり書き直したりすることを考えると、決して余裕があるわけじゃないかも知れんの」


 カクヨムの予約投稿は一年先でも予約できるらしいので、最初に全部予約投稿しておくと良いらしい。毎日投稿する手間を省いて、その分を『活動』に回すのが詩織さんの案だ。なるほどなあ。ただしシステムの動作確認のために、一作目の時に予め実験しておくのと、本番もちゃんと投稿されていることは確認した方が良いとのこ。


「ところで、投稿が十二月と一月に跨っているんですけど、二ヶ月間分……六十話ぐらいに分けて書くんですか?」

「まあそれでも構わんが、一月は十五日から二十日の間に完結させれば良いと思うぞ」


 十二月の開始日に数話をアップし、それからは一話ずつ。そして一月は月末ではなく少し早めに最終話をアップするとのこと。


「開始と同時に多くの作品が投稿されるから、まさに祭りの開始じゃな。この日は特に自分の作品が他人の目に留まりやすい。そして多くのフォローや星を貰えるじゃろ。できるだけ読み手にアピールするために、時間をずらして数話投稿したいところじゃ」

「なるほど、スタートダッシュと言うヤツですね! じゃあ、早く完結する理由は?」

「完結ブーストじゃ」


 またそんな専門用語……詩織さんの説明では、『読み専』の人の中にはある作品が完結するのを待って一気に読む人が一定数いるとのこと。多くの作品が完結を迎える月末に完結して埋もれてしまうよりも、早めに完結してそれらの人に読んでもらう『完結ブースト』を狙うそうだ。戦略的! また、完結するとカクヨムのトップページ、『最近完結した小説』に載るのでその効果も狙っているらしい。


「評価してもらえるタイミングを逸しないことが重要なのじゃ」

「流石ですね! ところで、一作目と二作目って続きものでいいんですかね。二作目が一作目の続編みたいな」

「ダメじゃな」


 えー、そこはきっぱり否定するんだ。続き物なら書くのも楽そうなんだけどなあ。


「二作目が一作目の続きじゃと、一作目を読まなければ内容が分からんじゃろう? それだけで読者が離れる可能性がある。あと、あまりに話数が多いと読んでもらえんかも知れんからな。適度な文字数で、適度な話数を心がけるのじゃ」


 難しいなあ。適度な文字数とは二千から三千字を目安とし、話数としては四十五から五十話とのこと。まあ、計算的には詩織さんが提示したスケジュールに収まるな。僕は文系で計算とかあまり得意ではないんだけど、まさか小説を投稿するだけでこんなに数字が出てくるとは思ってなかったよ。祭り……カクヨムコンは奥が深いなあ。

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