第12話 決戦 そして……。


 私達はバハムートと共に砂漠の地下を進む。そして、太陽の光が見えてくると。

そこはバハムートの里であった。その里は中央に小川が流れ、緑の大地の自然豊かな場所であった。


 うん?


 プラハさんの持っている琥珀が光りだす、これはバハムートが大地に置いてくれと頼んでいる様子であった。プラハさんは琥珀をバハムートの里の大地に置くと。バッリン!琥珀は粉々になり。バハムートが現れる。


「傷が癒えたのですね」


 プラハさんの問いにバハムートは頷く。どうやら、私達の旅も終わりに近いらしい。そんな余韻に浸っていると。


『ビビビ!!!』


 何事?


「転送魔法です。私の故郷の国からです」

『バッハ帝国の鋼のバハムートの攻撃あり、至急。戻れたし』


 バッハ帝国の鋼のバハムートか……こちらには本物のバハムートが居るのだ。今度こそ負けない。


「皆さん、私のバハムートの上に乗って」


 急がせるプラハの言われるままにバハムートの上に乗る。


「まさか、飛ぶのか?」

「はい、いっきに私の故郷の国に戻ります。ウエルさんも月草もつかまって」


 私は風に成れていた。バハムートの背中の上は自由な翼そのものであった。プラハさんの国ははるか東方の国である。それがこの短時間で着いてしまう。流石、バハムートである。


「見えた!私の国だ、高度を下げる」


 建物から煙が上がっている。


「バッハ帝国の鋼のバハムートか?」


 私の問いにプラハは興奮した様子で返事を返す。


「はい、肉眼で観測、鋼のバハムートです」


 女騎士団長のマーゼルも見える。


「この国のバハムートですね、前回は取り逃がしましたが、今回はそうはいきませんよ」

「何故、しつこくバハムートを狙う?」

「簡単なことです、第七魔王マリュードがこの地に封印されているのです」


 砂漠の地下で第四魔王デスクロスが封印さていたようにバハムートは魔王の封印の守り神なのである。そして、この地のバハムートも第七魔王マリュードの封印を守っているらしい。


「おほほほ、我がバッハ帝国は魔王の力も利用します」


 バッハ帝国の野心は何処まで酷いのだ、封印された魔王の力も利用するのか。


 私達は鋼のバハムートとプラハさんのバハムートが対じするのを見守る。


 決戦だ。


 バッハ帝国の鋼のバハムートは最強の兵器として作られたのだ、ここで鋼のバハムートを退ければ帝国の勢いは断たれる。私はフェアリーソードを抜き、プラハさんはバハムートにまたがり大剣を取り出して、戦闘態勢を整える。ウエルもまた術式を走らせる。これで魔法が使えるのだ。


「よし、総力戦だ」


 戦闘に入ると山は炎に包まれ、河は枯れて辺りは騒然とする。


「ウインドカッター」


 黒いフェアリーソードから放たれた攻撃は鋼のバハムートに直撃する。


「グオ」


 鋼のバハムートは凄まじい声を上げる。


「これは、行けるな」

「まー五月蠅いハエ」


 女騎士団長のマーゼルはヒステリー的に叫ぶと、鋼のバハムートから蒸気が噴き出す。


「弱っています。ここでバハムート!『フレアバースト』だ!!!」


 プラハさんが叫ぶとバハムートからエネルギー弾が放たれる。


『グオオオオ』


 鋼のバハムートは崩れ落ちる。ふうーどうやら勝利の様だ。


「有りえませんわ。しかし、この状況では撤退しかありません」


 すると、マーゼルは急いで逃げ出す。


 私はウエルと共に旅に出ていた。バッハ帝国の鋼のバハムートを倒して莫大な賞金を得たのである。帝国のやり方に気にくわない人達が賞金をかけていたのだ。ウエルは「うっは、俺ら金持ち」が口癖になるほどの金額であった。それから、プラハは聖女としての務めがあり月草が退屈そうであった。


 でも……何か寂しい。


「ねえ、ウエル、バハムート伝説のある所に魔王が封印さているのよね」

「えぇ」


 ウエルが肯定すると。


『ダメです』


 うん?空の上から声がする。バハムートの上に乗ったプラハであった。月草も居た。


「まだ、全部言ってないよ」

「魔王を復活させて腕試しでもするきでしょう」


 ずぼしだ。バッハ帝国が衰えて世界は実に平和になったのだ。


「もう、サナったら。私が居ないとダメダメね」


 プラハはバハムートを琥珀の中にしまうと。私達の馬車に乗り込む。プラハは馬車の何時もの場所に座り。


「一緒に旅がしたいな」


 と、言う。そして。一瞬の沈黙の後、私は笑顔で返事を返す。


「よし!出発だ」

 

 それは、世界中を回る自由な旅の始まりであった。


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バハムート伝説 霜花 桔梗 @myosotis2

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