アンラッキーナンバー
折原さゆみ
第1話
「宝くじでも買ってみようかな」
男はくじ運がすこぶる悪かった。くじという名がつくもので当たった試しがない。だからこそ、30歳を過ぎた辺りで一度、自分の運をあげようと思った。
「今年のラッキーナンバーは7だった気がする。7枚だけ買ってみよう」
年末に近付いたある日、男は最寄りのスーパーで見つけた宝くじ売り場を見てその場で購入を決めた。ラッキーナンバーは風水の本で見かけたものを参考にした。そのまま、男は大晦日を楽しみに仕事に明け暮れた。宝くじには、今年から新たに導入した制度を大きく宣伝していたが、男の目に映ることはなかった。
「嘘だろ」
大晦日の日、宝くじの当選発表をネットで見ていた男は驚きの声をあげた。慌てて手元の宝くじの番号を確認する。7枚購入した宝くじの番号はすべて最後の桁が7だった。そして、ネットに書かれている当選番号もまた……。
男は結局、宝くじで損をすることになった。宝くじを運営する会社では新たな制度を設けることによって、収益を獲得しようと考えた。今までよりも当選金額の本数と金額を上げて、客の期待度をあげると同時に、アンラッキーナンバーを設定することにした。
「宝くじに当たったのにお金を払うことになるとは」
男の口座から当選分のお金が消えた。1枚1万円で7枚分。合計7万円がなくなった。マイナンバーカードが世間に普及して、宝くじも政府監視の運営となり、当たりもアンラッキーナンバー当選者も管理されることになった。そのため、当たりが現れずに当選額が宙に浮くこともなくなった。
しかし、このアンラッキーナンバー制度は次の宝くじからはなくなってしまう。期待を込めて買った宝くじなのに、当選したらお金を払わされるなんて御免だというクレームが大量に入ったためだ。
結局、男の運は宝くじで上がることはなく、ただ男の中でアンラッキーナンバーが7になっただけだった。
アンラッキーナンバー 折原さゆみ @orihara192
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