アンラッキーなコンビニ店員さん。

秋雨千尋

コンビニ夜勤は七つの大罪と共に

 私は七瀬七美ななせななみ。二十七歳。

 彼氏と別れて、派遣切りに遭って、お先真っ暗! って感じだけど、とりあえず超時給いいコンビニ夜勤バイトを始めてみました。

 お客さんが来なくて楽だろうなって思ったのに。


「ここにあるの全部買うよ」


 廃棄寸前のお弁当がキレイサッパリ無くなった。フードロスの観点から非常にありがたいけど……これ一人で食べるのかな?


「棚の雑誌、ぜーんぶ俺のね」


 大人向けコーナーが空っぽになった。

 成人だから問題ないけど、こういうのって男友達と回し読みとかするのかな?


「お姉さん、若くてキレイね……何か特別な化粧品とか使っているのかしら?」


 マスクとサングラスに帽子まで被って、夜なのに日焼け対策もバッチリな怪しい女性が現れて、化粧品コーナーを空にした。


「実は一本十万円の秘密の化粧水を使ってるんです。紹介しますので良かったら」


 女性は無視して鏡で自分を見始めた。

 まあ嘘なんだけどね。


「だるいんで床で寝ていいっすか」


「テイクアウトコーナーをご利用くださーい」


「百円のパンを五個買ったら、一個おまけとか無いですか」


「ありませーん」


「この店はオレ様が貰う事にするわ」


「店長バイトも募集してますんで、まずはお電話くださーい」


「オイ、テイクアウトコーナーの椅子をくっつけて寝んなよ、ぶちのめすぞ!」


「喧嘩はおやめくださーい」



 怪しい七人の客が毎晩やってくるのだ。



「ボーショク、唐揚げ弁当はオレ様が頂いたぞ」


「じゃあゴーマンのお茶は貰うよ」


「タイダ、帰んぞ」


「フンドの背中に乗せてよー」


「シキヨク、読み終えたエロ本はメルカリで売るからキレイに使ってください」


「ゴーヨクはケチくさい」


「私はキレイ。シット最強伝説」


 一行は嵐のように去っていった。爆買いしてくれるから売り上げはいいみたいだけど、別に嬉しくない。売れようが売れまいが私の時給には関係無いから。手間がかかるだけアンラッキーだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アンラッキーなコンビニ店員さん。 秋雨千尋 @akisamechihiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ